MIDPARK PROJECT 2010「東京のまんなかでいちばん気持ちのいい場所になりたい」をテーマに、都心の豊かな緑とともにあるライフスタイルを提案します。
Vol.4 吉田恭子さん

“ただいま”の並木道。緑はいつも、ただ静かにそこにあり変わっていくのはそれを見る人のほうかもしれません。木でできた楽器・ヴァイオリンを用いて人々に音楽を伝えている吉田恭子さんにも年に一度、自分のきもちと向き合うとっておきの場所がありました。

木々が生い茂る並木道を、ヴァイオリンケース片手に歩くのはヴァイオリニストの吉田恭子さん。年に一度、同じ季節、同じ場所でリサイタルを行っている彼女にとって、そのホールへ向かうこの道は特別な存在だといいます。
「リサイタルは今年で11回目になるんですが、毎年決まった時季にこの道を通るので、ここの緑や風景を見ると“ほっ”とします。今年も帰ってきたよ、というか。それと同時に、1年間の自分の成長を振り返ったり、あれからもう1年経っちゃったんだなって、時間の速さを実感したり……。いろんな想いが込み上げてくる、私にとっては“原点”のような場所なんです」
土手の下から幹がのびているため、大人がちょうどくぐり抜けられるほどの緑のトンネルが続くこの道。枝葉に包まれるように歩を進めると、ふとした隙間から大きな空と都心の街並が見渡せます。吉田さんが訪れる秋は、道沿いに並ぶ木々もほんのり紅葉しはじめ、「1年で一番凛とした風景」なんだとか。
「リサイタル当日も、リハーサルと本番の間、ちょっと陽が傾いた時間帯にこの道を歩いたりします。演奏家にとってリハーサルは、会場ごとに異なる音の響き方を確認するために大切で、すごく集中するんですね。そんな張りつめた神経を、緑の中で過ごすことでリフレッシュさせるんです。また、ヴァイオリンという楽器は湿気を嫌うので、当日の湿度を知る意味でも、外に出てみることは欠かせません」

吉田恭子

年に一度帰ってくる 緑の風景

空

公演などで全国各地に足を運ぶ吉田さんの中には、いくつもの緑の風景があるといいます。
「東北の自然は繊細だし、瀬戸内海に浮かぶ周防大島は竹林が印象的でした。留学中、ニューヨーク郊外で出会った自然は“ワイルド”という感じで、ダイナミックでしたね。緑にもその土地の“顔”があるんですよね」
さまざまな緑の風景を吉田さんとともに味わっているのが、相棒のヴァイオリン。
「これは1740年代に作られたものです。200年以上も前に作られたものが、今も現役で、私たちを楽しませてくれるってすごいと思いませんか」と、愛着のこもった様子で楽器に触れる吉田さん。指で軽く弦を弾くと、信じられないほど大きく、またやわらかな音が響きました。
「私は時々、神社やお寺などの屋外でも演奏する機会があるのですが、緑の中で奏でるヴァイオリンの音色は神秘的で美しく聴こえますよ」
木々が見守り、月や星がまたたく屋根のない演奏会。木から生まれた小さな楽器を片手に月の光を浴びて素敵な音色を奏でる吉田さん。そんな風景が浮かんできます。

月夜に聴きたい音楽がある

「外に出ると、つい月を探してしまいますよね」と、空を見上げた吉田さん。
「普段から月を見るのが大好きなんです。空にぽっかりと浮かぶきれいな月を見つけるとうれしくて。満月だけでなく下弦の月、半月などそれぞれに魅力がありますよね。音楽にも、月をテーマにした楽曲はいっぱいあります。月の表情によって聴きたい曲は変わりますが、満月の夜なら『タイスの瞑想曲』がいいかな。女性が天に昇華されていく物語の中で奏でられる1曲なので、私の中では『かぐや姫』のイメージなんです。また、私が好きな日本画家・東山魁夷さんの作品には、『花明り』や『月照』など月を描いたものがたくさんあって、月の出ない日でも画集を開いてはお月見気分になっています。本物の月だけでなく、月下美人や月見草といった月がつく植物にもなぜか惹かれます。月を楽しむ術は尽きませんね」

Vol.4_Parson kyoko yoshida

chama

The staff's notes

「外に出ると、つい月を探してしまう」という吉田さんですが、9月は「お月見」の月。私の田舎、静岡の月見団子は「へそもち」というまん中がくぼんだ平たい形の団子で、12個お供えする風習がありました。この団子を食べるのが楽しみだったことを思い出します。「月より団子」だった幼少期とは違って、今ならもっと月夜を楽しめそうです。東京ミッドタウンでは、月を見ながらスローな夜を楽しむ「Tokyo Midtown Beauty Weeks“自分磨きエクササイズ”」を9月18日(土)~26日(日)に開催。vol.1の椎名由紀さん、vol.3のchamaさんも講師として登場します。皆さんも一緒に秋の月夜を楽しみませんか。[M]

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