
木々踊る、創作の庭。ダイナミックな幹や繊細な葉脈に目を奪われたことはありませんか?それらはまさに、自然が生み出すアート。時に目には見えないモチーフを自らのからだひとつで表現する森山開次さんにとって緑の中はインスピレーションの宝庫でした。。
「小さい頃、“もし生まれ変わるなら何になりたい?”という問いに、“植物になりたい”って答えていたんですよ」
ちょっと照れくさそうにそう話してくれたのは、コンテンポラリーダンサーの森山開次さん。木に対する憧れは強く、こんなエピソードも話してくれました。
「僕の“森山”という名前も、活動をはじめる時に、どうしても“木”という字を使いたかったんです。大好きな木を3つ重ねて“森”。それに、木がある場所の“山”を足して“森山”。本当は住む場所も山の中がいいんですけれど、実際はそうもいかないので、近くにこうして木々に囲まれる場があるのはすごく助かっています」

目にした景色が 自分の中に沁みわたる

カメラとクロッキー帖が入ったナップザックを背負い、風のように現れた森山さんからは、ステージで見せる凛とした表情とは違う、リラックスした空気が漂っていました。
「トレーニングやストレッチをしに来ることもありますが、ほとんどは仕事を終えた後、リラックスするために来るんです。ぼけ〜っと頭をカラッポにして、ただ木肌を眺めたり、風が揺らす葉の音を聞いたり、吹き抜ける風を感じたり。歩きながら見つけた珍しい形の木やオブジェをカメラに収めたりもします」
そう言ってカメラを向けた先には、立派でユニークな枝ぶりの木がありました。クロッキー帖に描く絵も、植物が多いんだとか。
「それこそ、木の幹の模様を描いたり、落ち葉の模様からイメージを膨らませていったり。それが舞台のセットや衣装のヒントになることもあるんですよ。そう思うと、ここで目にしたもの、感じたものが、その時は意識していないけれど、巡り巡って自分の踊りに反映しているような気がします」
自然に触れることで こころがニュートラルに戻っていく
幼い頃に「植物になりたかった」森山さんは今、「木のように踊りたい」という。
「大地に根をはってどっしりと立つ幹と、風に揺れて踊っているかのような枝葉。自分の踊りにも、木と同じような芯の太さとしなやかさが出るように意識しています。また、木を見ていると、どっしりとした幹が地中から水を吸い上げることで枝を伸ばし、時季がくると葉を落とし、その栄養分をまた幹が吸い上げて成長していくというシンプルな構造がわかるんです。僕のダンスでは、時に宇宙や生死といった自分が見たことも経験したこともないことを表現しなきゃいけないことがあるんですけれど、四季を通じた木々のサイクルを感じることで理解できるところがあるというか……。ただ、そうした自然界のことを表現しているにもかかわらず、自分が普段いる場所はスタジオだったり劇場だったり人工的な空間。自然に触れることでそのギャップを中和している感覚もあります。ほんと、木から得るものがたくさんあるんです」



外に出ると、肌寒く感じる季節になりました。葉を落とし、枝が主役になった木もちょっぴり寒そうに見えますね。そんな木々の中を歩いていると、なんだか寂しい気持ちになることが多かったのですが、「四季を通じた木々のサイクルを感じる」という森山さんの言葉に、はっとさせられました。落ち葉の模様にも、その生死やメッセージがあるなんて、想像するだけでも壮大な気分です。木々にとっては四季を彩るクライマックスとなる紅葉。東京ミッドタウンにもそろそろそんな季節がやってきそうです。枝葉の色どりメッセージを感じながら、自然の中を歩いてみませんか。[M]






