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2008年10月23日 更新

審査員コメント
五十嵐威暢(アーティスト/多摩美術大学客員教授)

アートを審査することはいつも難しい。限られた情報と時間の中で審査員も査定されているようなものだ。しかし、たくさんの応募作品、新しい才能との出会い、審査の過程での議論の沸騰、二次審査での作者とのやり取り、最終審査での賞の決定などを通して、この新しいアートコンペは、そのアイデンティティを確実に築き始めている。審査プロセスに於いて、若い才能を支援するという基本的な目標がたびたび確認されたが、今回は残念ながらグランプリ受賞作品は見当たらなかった。応募作品に総じて言えることは、コンセプトの明快さ、意図説明の簡潔さ、用意された展示スペース(場)に対するこだわりに一層の努力が求められていることだと思う。

神谷幸江(広島市現代美術館 チーフキュレーター)

都市の活気ある場所に作品を展示する、そのエキサイティングな魅力ある機会に、初回ながらたくさんの応募があったことに、若いアーティストの皆さんの意欲的な関心が伝わってきました。今回のコンペを通じて感じた2つのことがあります。ひとつはもっとチャレンジングであってほしいこと。発表の機会を求めるだけで、既存の作品のプレゼンテーションに終わってしまうケースも多く見受けられました。なぜこの時、この場所で、この作品を作るのか。その問いをいつも自問してほしいと思います。もうひとつは自身の作品について語る言葉が薄いこと。制作技術だけでなく、作品の背景にあるコンセプトをしっかり打ち立て、表現者としての考えを伝えていくことの大切さと責任を改め考えてみてください。

清水敏男(東京ミッドタウンアートワークディレクター/学習院女子大学教授)

まず第一に、多くの若いアーティストが参加し、さまざまなコンペ案を提案したことを高く評価したい。今回は第1回であり方向性が見えにくかったと思うが、展示場所の特殊な条件にもかかわらず、多くの挑戦があったことを喜びたいと思う。実際、展示場所の条件は制約でもあるがさまざまなことが想定できる面白さもある。最終選考には漏れたが、コンピューターを用いた作品にも秀作があり、次回に期待したい。また絵画作品はこうしたコンペでは分が悪いが、展示方法とコンセプト次第では効果がだせると思うのでこれもまた次回を期待したい。全般的に言えることはコンセプトが弱いことであり、この場所に展示することの意味、与えられたテーマの意味をもっとよく考えてはどうかと思う。また作品の完成度を高めて欲しいと思う。今回はグランプリを選ばなかったが今後のさらなる展開を期待してのことである。

中山ダイスケ(アーティスト/東北芸術工科大学教授)

本コンペの構造、つまり、テーマに対してアイデアをプレゼンし、制作費を得て、商業施設通路を往来する一般の人々に向けて作品を掲げる。まるで駅内広告です。この特色を見抜いている応募者がとても少なかったように思います。実社会に、ホワイトキューブ的空間はほとんどありません。そして観客も、ショーウインドウの前を忙しく通り過ぎる人々のように、それほどアート観賞に費やす時間はありません。広告と情報にあふれる街「東京」において、アートが街に飛び出す際に突きつけられる、残酷で、極めて重要な「真実」です。いつかここを制する人は「東京らしいアート」のありかたを指し示してくれる人なのでしょう。面白いコンペの誕生です。

八谷和彦(メディア・アーティスト)

今回展示された三作品は、どれも主催者や審査委員の期待に応える良い作品になったと思います。ただし、非常に残念なことですが、今回は突出した印象を与える「これしかない」という作品には出会えませんでした。三作品とも「ここがこうだったら良いのに」といういわば弱点の部分があり、協議の結果(来年を期待して)、今年は「グランプリ該当なし」となりました。ただ、制作していただいた3人の作家はすでに充分な実力があり、また今後の飛躍が期待できる方ばかりだと思います。どうか皆様、3人の作家の作品を実物で見ていただき、できれば名前を憶えていただき、今後も注目していただければ、審査委員の一人としてこれに勝る悦びはありません。