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ACTION REPORT

VOL.03

FIS TOKYO

-

時間
11:00~21:00
場所
東京ミッドタウン 各所
主催
アルスエレクトロニカ
協力
東京ミッドタウン
FIS TOKYO展
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

Future Innovators Summit(フューチャー・イノベーターズ・サミット 以下、FIS)は、アルスエレクトロニカと博報堂が共同開発した体験型ディスカッション・プログラムです。2014年にスタートしたこのプログラムを通して、オーストリア・リンツ市に世界中から集まったイノベーターたちが、未来に関する数多くの創造的な問いかけを生み出してきました。アーティスト、デザイナー、科学者、技術者、起業家、哲学者など異なる背景・専門性を持ったイノベーターたちの白熱した議論は、いわば「生きるシンクタンク」として機能しています。

2018年5月、東京ミッドタウンで行われたFIS TOKYOでは、東京を「未来のためのラボ」として捉え、多彩なゲストを招きトークセッションを行いました。単に「解決策」を講じるだけではなく、より良い未来を生み出すための創造的な問いかけ、「クリエイティブ・クエスチョン」が提案されたFIS TOKYOを、レポートします。

なぜ「東京」なのか

例年アルスエレクトロニカによってオーストリアで開催されていたFISを、ここ東京で開催する。そこには、東京だからこそ提起できる問いへの期待がありました。日本は「課題先進国」と言われることがあります。これは、世界の国々がこれから抱えるであろうさまざまな課題を、日本が「先駆けて」抱えている、という意味です。

環境問題、人口問題、都市と地方の問題、エネルギー問題など、山積する課題に対して果敢に取り組んでいる日本、そしてその首都である東京。加えて、東京は世界有数のインフラストラクチャーと最先端のテクノロジーによって支えられています。1,000万人以上が生活をする大都市・東京の息遣いをそのままに、リアルな東京を「未来の都市を再発明するラボ」として再設定してみることが目指されました。東京こそ、今最も、未来について問うのに最適な場所なのです。

今回設定されたテーマは3つ。「DEATH-LIFE(世界一高齢化が進んだ都市で考える未来の生と死とは?)」「TECH - SKIN(先端テクノロジー都市が発信するファッションと身体の未来とは?)」「PUBLIC - PRIVATE(広場のない大都市で考える未来の個人と公共とは?)」です。

なぜ「東京」なのか
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative
なぜ「東京」なのか
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

未来の生と死

DEATH-LIFEのチームは、「生と死」という永遠に答えが出ない、そして一生考え続けねばならない難題を前にして、2つの試みを行いました。ひとつは、東京に集まったイノベーターたちにインタビューを行いビデオにまとめるというもので、もうひとつは、ウェブサイトを作り、世界中の人々にも問いかける、というものです。

DEATH-LIFEのチームが作り出したクリエイティブ・クエスチョンは、How can we care-fully co-craft death-life?、日本語にすると、どのようにして私たちは、じっくりと大切に、生と死を共に作り上げることができるだろうか?です。東京は常に変化し、新陳代謝をしている、それ自体がひとつの生命体のような存在です。そこでは若者だけでなく、高齢者も暮らしています。それぞれの世代が分断されたり、あるいは孤独に消え去っていくのではなく、手をとりあい、考え続けることを模索する。DEATH-LIFEチームの提案する「care-fully」に生と死を「co-craft」するという言葉には、care(ケアする、思いやる)、co(いっしょに)という意味が含まれています。簡単に答えが出ない、そして誰にとっても切実な生と死という問題だからこそ、共同することの重要さがありありと浮かび上がってきました。

未来の生と死
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

ファッションと身体の未来

TECH - SKINのチームが設定したクリエイティブ・クエスチョンは、How can tech skin foster kinship with all living things in a future where human value have shifted?です。日本語にすると、人間の価値がシフトした未来では、tech skinは全ての生き物との繋がりをどのように育めばよいのだろうか?となります。

人間の価値がシフトした未来とは、これまでのような、人間中心主義的なマインドが大きく揺さぶられた世界です。地球環境を、人間の暮らしをより豊かにするための材料として捉えるのではなく、それぞれの生命との関係性を結び直す必要がある、とTECH - SKINチームは語りました。そのときに重要な役割を果たすのは、自分の身体と、世界とを結びつける接合面ーーファッションに他なりません。ファッションを、単なるおしゃれの道具であると見なすのではなく、自分も身を浸している環境で共に生きるさまざまな生き物との新たな関係性の糸口として再設定すること。TECH - SKINチームは、テクノロジーとファッションが紡ぎ出す新たな未来について多くのヒントを与えてくれました。

ファッションと身体の未来
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative
ファッションと身体の未来
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

未来の個人と公共

PUBLIC - PRIVATEのチームは、東京の街を歩きながら議論を重ね、次のようなクリエイティブ・クエスチョンを生み出しました。How can we layout the “blank” that inspires the public to accept each other like a cat? 、日本語にすると、互いを猫であるかのように受け入れることができる公共性を誘発する「空白部分」はどのように展開できるだろうか?です。六本木の街を歩いていると、それぞれが自分の目的のために合理的に行動するような状態を目にします。最短ルートを、最速で、無駄なく、効率的に移動する人々。

しかしPUBLIC - PRIVATEチームは、そういう場所でこそ、柔らかい障壁、ちょっとしたハードルのようなものが必要だと提案します。全てが全自動で達成される空間よりも、ちょっとした会話が必要だったり、ちょっと不便な遠回りがある空間の方が、よりよい公共的な場になりうるのではないか。PUBLIC - PRIVATEチームは、「ばったり出くわした猫」によって通行人の無関心さが取り除かれ、一時的なコミュニティが生まれることを例にあげながら、力強く、「ちょっとしたハードル」のある公共空間の設計を提案しました。

未来の個人と公共
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

ふたたび、なぜ「東京」なのか

2020年に向けて、東京という都市は劇的な変化をしつつあります。グローバルな視野で見ても、そこではテクノロジーとサイエンスの目覚ましい発展があり、一日ごとに私たちの生活はアップデートされているかのようです。その変化を一身に受ける東京という都市だからこそ、人類がこれから解決しなければならないさまざまな課題について共に考える場所が必要です。さまざまな専門家がいっしょになって悩み、考え抜き、そしてそこで生まれた問いを共有していく。この「未来のためのラボ」それ自体がひとつの公共性のありかたかもしれません。FISは、ここ東京で、新たな進化を遂げたのです。

ふたたび、なぜ「東京」なのか
Photo by Takuma Terata /Ars Electronica Tokyo Initiative

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