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ACTION REPORT

VOL.06第2回 未来の学校祭

“脱皮展”
既成概念からの脱出

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主催
東京ミッドタウン
特別協力
アルスエレクトロニカ
助成
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
脱皮 / Dappi展 ―既成概念からの脱出―
© LIMINAL / Louis-Philippe Rondeau

東京ミッドタウンとアルスエレクトロニカは、昨年に引き続き第2回目となる「未来の学校祭」を開催しました。
「未来の学校祭」は「アートやデザインを通じて、学校では教えてくれない未来のことを考える新しい場」をコンセプトに掲げ、イベント来場者とともに未来の社会について考えるイベントです。
展覧会だけでなく、パフォーマンスやトークイベント、ワークショップなど子どもから大人までさまざまなプログラムを体験することができます。

【第2回 未来の学校祭 “脱皮展” 既成概念からの脱出 特設サイト】

今年のテーマは「“脱皮” 既成概念からの脱出」。
普段暮らしているとなかなか気づくことができない「当たり前のこと」や、自分で勝手に設定してしまっている「限界(リミット)」。そうした既成概念から私たちはどのように脱出することができるでしょうか。
「脱皮」とは、それまでの自分の「型」から抜け出し、新しい自分になること。
今回の「未来の学校祭」は、アート作品や既成の枠組みを打ち破ろうとするプロジェクトを通じて、私たちの社会を取り巻く既成概念から「脱皮」するきっかけを提案します。

脱皮 / Dappi ―既成概念からの脱出―

「未来の学校祭」という名前のとおり、今年は大学との連携プログラムも実施されました。既存の社会から「脱皮」するために、学生たちの成長は不可欠です。
Part1の「未来の大学」では、これからの時代、大学においてどのような授業が必要かを問いかけ、教師、学生そして来場者が考える未来の授業シラバスがいくつも提案されました。
Part2の「大学の現在」では、「次の(次の)社会」を創造するための多様な研究を実践する慶應義塾大学SFCや、工学系研究者と芸術系研究者が連携して新たな学問を開拓する筑波大学、持続可能で包括的かつ解放されたファッションデザインを切り開くリンツ芸術デザイン大学など、それぞれの大学の取り組みが紹介されました。

大学との連携プログラム
大学との連携プログラム

五感や身体性の可能性など社会の多様な要求に応えることのできる力を引き出す武蔵野美術大学では、学生の卒業制作として「Music Composition」という作品が展示されており、鑑賞者はオーケストラのミニチュアを操作することで、指揮者の立場から、オーケストラのなかを自由に移動することができます。そうすることで、それぞれの楽器パートの演奏を視覚的に把握することができるのです。

Music Composition
“Music Composition” by 武蔵野美術大学

一際ユニークな取り組みをしていたのが、多摩美術大学 情報デザイン学科 メディア芸術コースです。
「逆大学」と呼ばれる展示プロジェクトでは、既存の「コース」に学生たちがあてがわれていくのではなく、学生たちのやりたいことを元に、新たな「コース」が作り出されるという仕組みが導入されています。トリッキーでユーモラスな企画ですが、「なぜそれをやりたいのか?」と、生徒一人ひとりに対して自分自身で課題を設定させる教育の姿勢が打ち出されていて、教育の「脱皮」を考えるのにふさわしい提案となっていました。

多摩美術大学 情報デザイン学科 メディア芸術コース
“逆大学” by 多摩美術大学

「DAPPI MUSIC PERFORMANCE」の初日のパフォーマンスは2部構成で行われ、体験した人々は、音楽の常識が「脱皮」する瞬間を目撃することとなりました。
前半は「人間による演奏」と、その演奏をもとに「自動生成されていく映像のコラボレーション」が行われました。
滑川真希による演奏を、Cori O'lanによるデジタルリアルタイムビジュアライゼーションが追走するパフォーマンスは、音楽の持つ力をより広げてくれる可能性に満ちたものでした。

DAPPI MUSIC PERFORMANCE
滑川真希、Cori O'lan

後半は、前半とはちょうど対極の構成をとり、「AIによる演奏」と「人間によるリアルタイムの映像パフォーマンス」が行われました。音楽の世界でひとつの「脱皮」を行った伝説的な人物である、ピアニストの故・グレン・グールド。
彼はまた、電子メディアによる録音に傾倒し、奏者と聴衆の新しい関係性に着目したことでも知られ、テクノロジーとの親和性の高い音楽家でもありました。
そんな彼の演奏をAI(人工知能)の「深層学習」によって再現し、人間の共創の可能性を追求するプロジェクトが《Dear Glenn, Yamaha A.I. Project》です。
このプロジェクトの成果としてヤマハ株式会社によって開発されたAI搭載のピアノ演奏システムは、「ARS ELECTRONICA Festival 2019 - Out of the Box -」で初披露され、今回未来の学校祭で日本初披露となりました。
「AIによる演奏」とは、亡きグレン・グールドを再現したピアノ演奏に他なりません。
どこか懐かしい、しかし全く新しいピアノの調べ。液体から固体までさまざまな材料を画面上で混ぜ合わせながらリアルタイムで美しい映像を作り上げていく中山晃子による「Alive Painting」というパフォーマンスと重なり合い、AIと人間が共創する新しい音楽表現の可能性が提示されました。

AIによる演奏
人間によるリアルタイムの映像パフォーマンス
“Alive Painting” by 中山晃子

「脱皮エキシビション」は3つのエリアにわかれています。「脱皮ルーム」では、普段の生活とは違った視点で自分を眺める作品がそろい、自分を脱皮するヒントが散りばめられています。
ルイ=フィリップ・ロンドーによる《LIMINAL》は、今この瞬間の自分と、過去の自分の境界を浮かび上がらせる作品です。今という時間は一瞬ごとに押し流されていき、文字通り「あっと言う間に」過去となってしまいます。
ルイ=フィリップは、「スリットスキャン」と呼ばれる技術を用いて、そうした時間の持続を空間として定着させます。光るゲートのようなところをくぐると、映像にはそれまでの自分が引き延ばされ、歪みながら映し出されます。
これはあくまでひとつのメタファー、つまり比喩として視覚化されているとも言えますが、5分前の自分と今の自分が寸分違わずいっしょであるわけではなく、細胞レベルで私たちの体が刻々と更新されていることを考えればとてもリアルな風景と考えられるかもしれません。

脱皮ルーム
“LIMINAL” by ルイ=フィリップ・ロンドー

「脱皮スクエア」は、現在私たちが暮らしている社会の問題を共有し、乗り越え、新たなコミュニティへと脱皮するためのエリアです。
長谷川愛は、《Revolutionary 20xx! Tool Kit》というカードゲームを発表しました。
これは、東京大学で行われた授業から誕生した作品でもあります。自分の悩みや痛みを掘り、問題を探したり、SDGs(持続可能な開発目標)のなかからトピックを選んだりしたあと、どのようなテクノロジーや思想を駆使すればその問題が解決するのかを考えます。このツールキットは、アートやデザイン教育を受けていない人を対象としていて、参加した人たちが、未来を拡張するアイデアをだしていけるようになっているのです。
長谷川愛が作品を通して創出するのは、「未来の革命家」へと「脱皮」する経験と言えるでしょう。

脱皮スクエア
“Revolutionary 20xx! Tool Kit” by 長谷川愛

h.o(エイチ・ドット・オー)の《What a Ghost Dreams Of?》は、来場者の顔情報をもとにして、AIが「存在しない人間の顔」を生み出す作品です。
モニタに映る、実際に存在しているとしか思えない人間の姿は、AIの演算によって作り出されています。タイトルにあるゴーストとは、姿形のない、監視や検閲のための新たな知性です。
私たちが生きる未来の社会は、快適さを追求するための技術と同時に、監視や検閲のための技術も進歩しています。そうした未来の社会のなかで、さらにそこから「脱皮」するにはどうしたらよいのか。h.oの作品は強く問いかけます。

h.o(エイチ・ドット・オー)の《What a Ghost Dreams Of?》
“What a Ghost Dreams Of?” by h.o

「脱皮ラボラトリー」には、企業による先駆的な研究・開発から生まれたプロトタイプだけでなく、受動的な消費者から能動的な消費者になるためのプロジェクトまで、社会のただなかで現在進行形で「脱皮」する試みが一堂に会していました。
株式会社 アイ・エム・ジェイの開発した《Mirrors》は、自分の姿が映らなかったり、自分以外の誰かの顔が映ってしまったり、輪郭が抽象化して映ったりと、通常の「鏡」の機能から逸脱した鏡です。そこでは、映るはずのものが映らず、映らないはずのものが映ることとなります。
自分が一番よく知っているはずの自分自身ですが、そこに潜む固定観念や、見過ごしてしまっていたことに気づかせ、自身の殻を破る、「脱皮」のための装置です。

脱皮ラボラトリー
“Mirrors” by 株式会社 アイ・エム・ジェイ
脱皮ラボラトリー
“Mirrors” by 株式会社 アイ・エム・ジェイ

現代社会は常に流動的で、未確定な世界にうまく適応するための能力が求められています。固定観念を脱ぎ捨て「脱皮」すること、そして新しい自分へと成長し続けること。そのためのヒントを、「未来の学校祭」ではたくさん見つけることができるでしょう。アートやデザインを通じて私たち一人ひとりが「脱皮」することは、やがて社会全体の「脱皮」につながっていくはずです。

未来の学校祭

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