unnamed -視点を変えて見るデザイン-
建築・デザイン事務所 noiz
unnamed -視点を変えて見るデザイン-
unnamed -視点を変えて見るデザイン-
- 芝生広場
- 10/15 FRI - 11/3 WED
- 11:00 - 21:00
※ 荒天中止
- 料金
- 無料
- 主催
- 東京ミッドタウン
芝生広場にカラフルなインスタレーションが登場します。
一見ランダムなパネルの集合体にしか見えない3つの構造物は、
特定の位置から見ると特定の像を結び、予想外のイメージを生成させる装置です。
この世界に存在するあらゆるモノやコトに、
ひとつの存在意義や名前を当てはめることなど、実は誰にもできません。
人間の数だけ視点や解釈があります。
価値も名前も、決めるのはあなた自身です。
パネルと単管で構成された構造物に、意味を見出し、
作品の名前を発見する体験をお楽しみください。
視点を変えて見てみよう
Creator’s Message
デザインというと、変更の余地のない完成されたものと考えられがちですが、実は使い方も見え方も解釈次第で多様に変化し、無限の可能性を引き出しうるのです。それこそ、本当のデザインの価値なのではないかと思います。
2007年に豊田啓介と蔡佳萱が設立。2016年に酒井康介が参加。建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築・デザイン事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや製作、システムの実装から教育、各種リサーチ&コンサルティング活動も積極的に展開する。
https://noizarchitects.com/デザインの裏話
Interview
広大な芝生広場に登場する3つの大きなインスタレーションの名は『unnamed』。「視点を変えて見るデザイン」という副題が添えられたこの作品を手掛けたのは、建築・デザイン事務所noiz(ノイズ)。建築を軸にデジタル技術を駆使したデザインやクリエイションを生み出し、教育、コンサルティングなど幅広い分野で活動する、豊田啓介、蔡佳萱、酒井康介の3氏。名前のない作品をつくりあげた裏には、どんな思考やプロセスがあったのでしょうか。
意味、価値、名前を引き剥がす
2020年の秋(Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2020 ※延期)に向けて、プロジェクトに声をかけてもらったのが2019年12月。コロナの影響で1年延期になって、でも1年後にもできるかどうかわからないという状況が続きました。時代が大きく変わるなかで、社会の中で求められているものも変わっていき、僕らのインスタレーションも当初のアイデアからは二転三転していきました。一貫して変わらなかったのは、「場所や物だけで完結しない」「見る人と見られるものとの関係そのものをデザインしたい」という点でした。
今回のテーマは「デザインの裏」。解釈はいろいろありますが、最後に定まった物が一般的に最終形だとすると、そこに至る「途中」が「裏」である、と僕らは解釈しました。途中をあえて見えるようにし、同時に最終形も見えるようなものを考えました。「見ることで完成させる建築」と言うとイメージが伝わりやすいかもしれません。建築は当然見るものでもあり、普通は見る時にはすでに形は決まっています。でも、今回は見る場所によって形、意味、そして名前が変わるようにデザインしています。名前は、存在価値そのものです。名前が意味を固定します。通常であれば、意味、価値、名前はセットで機能していますが、それを引き剥がしていきたかった。物だけに固まってほしくないし、見る人との行為、関係性の中でその都度、意味も名前も生まれてほしい。正解があるようなものにはしたくない。それが『unnamed』です。
僕らは、ものの意味を問い直すとか、デジタル技術とか、意識高そうなわかりにくいことをやる時もあります。でも、正しいから、技術的にすごいから人に伝わるというわけでもないんですね。なので今回は、多くの人に共有されている共通イメージや共感を出発点にしました。なぜなら、共感できるものがあったうえで、それが違ったものになる。そこではじめて意味や名前、価値のゆがみやずれを感じることができるからです。大人でも子供でもどこの国の人とでもつながることができる形のリソースを探し、形も楽しく、歴史を紐解いても面白いモチーフを探しました。それらを入り口にして、違う気づきにうまく皆さんを引き込めれば、と考えています。いつものnoizの印象とはちょっと違うかもしれませんが、僕らもかわいいものも扱うんですよ(笑)。
ある瞬間だけキュッと、意味をもつ
今回の舞台は芝生広場。僕も子供と一緒に何度も遊びに来たことがあります。作品の作り手から言えば、屋外は不特定多数の人が出入りするし、耐久性や安全性もシビアで、予想できない要素が多く、ハードルは高いです。その一方、見る側の視点になると、屋外は気持ちが開放的になる場所です。そこに来る人はすでに楽しい雰囲気に満ちていて、遊ぶぞ!という気持ちになっています。そんな芝生広場の環境をうまく使いたい、そういう明るい気持ちをブーストするようなものにしたい、と思いました。このインスタレーションが近くにあることでピクニックしたくなるような楽しい気持ちになってもらおうと考えました。
共感のカギとなるモチーフの見え方としては、発見する楽しさを最大限に確保しようとしています。遠くから見てわかってしまわないように、ある程度近づき、さらにある角度から見ないと、仕込みが見えないように設計してあります。「あれ?これ何かかもしれない」というのが急速に見えてきて、離れると意味が曖昧になっていく。ある瞬間だけキュッと意味が生成されるんです。そのコントラストをつくるために建造物の配置、大きさ、角度など、見えないところでかなり気を遣っています。大人から子供まで、できるだけ多くの人にいろいろと見つけてもらいたいですね。また、通常の建築だと図面で終わるところを、今回はかなり細部まで突っ込んだ3Dモデルをつくり、光の見え方、天気によって、モチーフがどう認識されるのかといった実験に近いような検証もやっています。そんなデザインの裏も面白いのでいつか見せられるといいですね。
これからは、いかに閉じないか
街や施設と、人との関係は、コロナによって大きく変わりました。これまでは、会社でもエンターテインメントでも「何かを体験する=その場に行く」ことでしたが、これからは、行かないことも経験になります。大規模再開発やエンターテインメント施設などが、いかに「場所」に閉じないかが大事になるわけです。その場に来られない人にいかに価値を提供できるかが、むしろその場所や体験の強さをつくるようなことが、これからは多くなっていくはずです。
デザインも、いかに閉じないか。ジャンルや行為がこれまでの領域に閉じたままになっていると、新しい価値や気づきはなかなか出しづらいです。目的なのか、手段なのか、道具立てなのか、アウトプットの形なのか、どこでもいいけれど、これまでのジャンルや領域から無理矢理出てみる。そういう姿勢が大事なのだと思います。新しい社会の組み合わせのなかで生まれる価値を、デザイナー自身が感じなければ、その価値は伝えられません。
僕は建築をやっているけれど、建築雑誌はほぼ見ません。数学とか、分子生物学とか、ゲームとか、建築とは違うけれど興味があるものに積極的に触れていくことで、専門から重心をずらしたり、自分の中にあえてアンバランスの部分をつくったりします。そこで得たものが直接何かの形に落とし込まれるわけではないけれど、最終的に新しい価値の土壌になる。これまでつながっていなかった領域との仕事は、やっぱりいろんな新しい気づきがあって面白いですよね。近年は、建築という物ではないところで、いかに価値をつくるかというプロジェクトにかかわることが多くなっています。最近では逆に、近頃は無性に純粋に家とか建物をつくりたくなってきていてもいて、あらためてモノや場所の持つ力を見直しているんです。
豊田さんにとって「デザイン」って何ですか?
答えを固めて相手に与えることではなくて、それを見た人や体験した人に、新しい気づきや価値のきっかけを与えられる、それがデザイン。物とか形とか色とかである必要はなくて、組み合わせた複合体や意味そのものであってもいい。その気づきが、ほかにも展開でき、応用できる。見方が変わり、見る人の内側の変化を誘発するものでありたいです。
参加クリエイターが語る
Interview Movie
出展作品の見どころ篇
これからのデザイン篇