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2020年8月5日Award News

【アートコンペ】最終審査に進む6作品が決定しました。

【アートコンペ】最終審査に進む6作品が決定しました。 【アートコンペ】最終審査に進む6作品が決定しました。

279点の応募作品の中から、1次審査(書類審査)、2次審査(オンラインプレゼンテーション)を経て、最終審査に進む6作品が決定しました。

これらの6作品は実際に制作、東京ミッドタウン「プラザB1」にて展示され、2020年9月29日(火)に行われる最終審査(実物審査)にて、グランプリ、準グランプリ、優秀賞を決定します。

各賞は2020年10月16日(金)に発表予定です。

最終審査に進む6作品(作家名50音順)

郊外観光 ~Time capsule media 3
<応募作品名>
郊外観光 ~Time capsule media 3
<応募作品コンセプト>
建築と都市の関わりや身近な社会、生活環境に注目し、公共空間を利用した壁画やインスタレーションを制作しています。今回、郊外の景色を都心に持ち込みます。経年劣化により偶然剥がれたトタン壁面の裏側に、過去でもあり同時に未来でもあるどこかの景色を覗かせ、現在都心で暮らす人々の記憶する地場へ接続します。
川田 知志
<作家名>
川田 知志(かわた さとし)
<職業>
アーティスト
<所属、出身校>
2013年 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修了

審査員コメント

場所と常に出会いながら、現実の被膜のようなものを剥がしていくようなことを数多く手掛けてきた経験値に期待が集まりました。大阪の日常を象徴している素材の中にどんな世界を見せてくれるのか。東京の郊外といったとき、その郊外とは何なのか。オンラインで繋がっているどことも言えない場所とも我々は繋がっているのかなということも感じさせました。

Floating surface
<応募作品名>
Floating surface
<応募作品コンセプト>
細いワイヤー状の矩形を 4つの頂点をテグスで吊り制御されたウィンチによって各頂点をそれぞれ上下させます。 歪めた形状により展示場所の70cmの奥行きよりも広く感じるようになります。 テグスは、波の動きのように大きく上下に動き矩形が波面に浮かんでいるような動きをします。 鑑賞者は、ダイナミックに動く矩形やパースの歪みに生じる奥行き感、 見る位置に印象が変化することを体感できる作品にします。
坂本 洋一
<作家名>
坂本 洋一(さかもと よういち)
<職業>
アーティスト
<所属、出身校>
2007年 東京藝術大学大学院映像科メディア映像専攻修了
2009年~ 株式会社ライゾマティクス所属

審査員コメント

作品を通して自然というものをどういうふうに表現するか。モーターを使って、空間の中で曲線を生み出すにはどのような素材を用いるべきか。自分が認識している重力や物質の問題を反転させてものを捉え直してもらえると、本番でより新たな作品の展開と、新たな空間の可能性と、物質の可能性を問う作品になるのではないかと思います。

拠り所の行方
<応募作品名>
拠り所の行方
<応募作品コンセプト>
まるで宇宙空間にいるかのように家やビルが中に浮かんでいる。
木炭により描かれたこれらのイメージは、フィクションであると同時にひび割れたコンクリートから現実としてのリアリティーが感じられ、観る者は現実と空想の間を行き来する。強固な素材の「コンクリート」と安息の場所である「家」という私たちの生活の中で安全性が確保されたものに、強い揺さぶりをかけることで明日にも変わるかもしれない都市の不安定さを表現した。
佐野 魁
<作家名>
佐野 魁(さの かい)
<職業>
アーティスト
<所属、出身校>
2019年 東京藝術大学大学院美術研究科修了

審査員コメント

木炭というシンプルな素材やコンクリートなど日常にある物質を使っていることに興味を持ちました。ステイホームが叫ばれる今の時代、自分の立ち位置から社会の失っていく風景というものを問い直すこと。家というものが記憶や時間や歴史の中でどういうふうに存在するのか。多くの人に問う作品になる可能性があるのではないかと思いました。

つながり
<応募作品名>
つながり
<応募作品コンセプト>
人の肌が大地の起伏に相似する瞬間があるように、光の陰影が生むつながりは自然における事物の関係性そのものをもあらわすようだ。日常の自然の中の光を色彩へと解体し、感情を伴う記憶へと変容させる。東京ミッドタウンという、自然と都市が一つに融合した空間とつながり合うこの作品から、近年失われつつある人と人/人と自然の美しい「つながり」、自身と外界との本来的な「つながり」を思い出してほしい。
船越 菫
<作家名>
船越 菫(ふなこし すみれ)
<職業>
学生
<所属、出身校>
2019年 京都市立芸術大学美術科油画専攻卒業
2020年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻在籍

審査員コメント

絵画というと、どうしても描いたものをどう壁にかけるかということが問題になりがちです。あえてそこではなく、東京ミッドタウンにすでにある環境と、自分の描く行為とをどう接続するかを起点に、実際の光を意識しながら平面を描かれているという点が印象深く、考えていることと実際の作品のイメージがとてもよく伝わってきました。

Where Are We Going?
<応募作品名>
Where Are We Going?
<応募作品コンセプト>
12フィートの木材を都内で購入し、それを持って東京都港区を歩く。木材は東京のアスファルトによって削られ、両端が尖っていく。木材が削れた分、歩くに関する私の経験値が蓄積されていく。目にはみることができない。
あらゆる公共交通機関が一堂に介する東京で、この木材を手に持って移動したいとき、歩くことしか選択できない。果たして本当に選べないのだろうか。選べたとして、私たちはどこへ向かおうとしているのだろう。
山本 千愛
<作家名>
山本 千愛(やまもと ちあき)
<職業>
アーティスト
<所属、出身校>
2018年 群馬大学教育学部美術専攻卒業

審査員コメント

一貫して12フィートの木材を持って歩いているというところに興味を持っています。この状況下で、自分たちの身体を使って何を感じ取れるかということにますます強く重要性を感じています。これから東京ミッドタウンの近くに足を運んで作品を作るなかで、何を感じて、どういう出会いがあるかに期待したいと思います。

微かにつながる
<応募作品名>
微かにつながる
<応募作品コンセプト>
きっと髪の毛には、その人の記憶や想いがつまっている。たくさんの人の髪の毛を編んでひとつにつなげることで、知らない誰かとつながるとともに、いつかは忘れ去られてしまうような様々な想いをつなぎとめておきたい。お互いの存在に目を向けずに忙しく行き交うなかで、一瞬でも他人の存在を感じてもらえたらと思う。
和田 裕美子

photograph:
Takeru KORODA

<作家名>
和田 裕美子(わだ ゆみこ)
<職業>
アーティスト
<所属、出身校>
2005年 多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業

審査員コメント

髪の毛という生々しい素材を使っている割には、出てくる動物や虫や植物がかわいらしく、そのギャップが印象的でした。人の体の一部を、その固有名詞から離れて量として還元するということや、知らない人から集めたものがどういうものなのかをよく考え、意識していただきたいと思います。かわいらしさと生々しさが魅力だと思って頑張ってください。

2次審査 審査員総評

大巻伸嗣
若い作家たちが、コロナ禍という状況の中どういうことを考えて世界に発表していくのか、私自身作家として勉強になり、関心をもって見せてもらいました。
このアワードでは、実感やリアリティというものを大事にしたいと考えており、東京ミッドタウンの場所性が重要となってきます。しかし、今回、本当に残念なことに、コロナ禍のためにリサーチすることが難しく、何を置くべきか、何ができるかという可能性と実感やリアリティがなかなか結びつかず、物足りなさがあったのではないかと思います。自分の経験や実感を通して社会と向き合っていく中で、日常や風景というものが、当たり前ではないということを、2次審査を通過した方も、惜しくも通過できなかった方も、もう一度深く問い直してもらえたらと思います。
金島隆弘
今回のコロナ禍で応募者数がどうなるかと思いましたが、蓋を開けると、審査員として関わった中では一番応募者数が多く、提案内容のレベルも高かったと感じています。今年はコロナ禍であるからこそ、更に自分自身や作品と向き合いながら、コンペに応募いただいた印象ですが、扱う素材や現場と作品とがどう関わっているか、その考え方が選考のポイントになったと思います。展示場所である東京ミッドタウンのプラザB1Fは、美術館ではなく人々が行き交うパブリックスペースであるため、美術にとってはかなりハードルの高い場所です。その条件を取り入れつつも、自分が制作したいと考えている軸のブレていない作品が選ばれたと思います。
川上典李子
制作にあたってのリサーチがいつものようにはできないなどコロナ禍の厳しい状況にも関わらず、皆さんが全力で提案してくれ、他者、自然、都市、記憶の痕跡などさまざまなものと人との関わりを探る意欲作が揃いました。感覚をとぎ澄ませ、その身体でとらえた空気のなかで今まさに考えていることが滲みでてきて、違和感、との言葉が何名から挙がっていたのも興味深い点でした。感じとった世界のその先をどう示してくれるのか、この2020年に制作される6名の作品の完成を多いに期待すると同時に、普段の取り組みのうえでの挑戦をしてくれたほかの6名の活動の今後も注目していきたいと思う審査となりました。
クワクボリョウタ
実際に現場のリサーチがしにくい中、予定調和的に作品の出来栄えを最優先に考えるプランが多いと感じました。それは、不安のなせる技でもあると思いますが、もう少し現状に対しての欲求を強く持ってもいいんじゃないかという気がします。アートはサービスではないので、多少破綻していても、何を求めているかを強く伝えてくれるものがあっても良いと思います。現在、日常の大半がオンラインになってしまっていることもあり、素材感や現場感といったことが考えられた作品が多かったと感じています。一方で、日常的にオンラインで過ごしていると、オンライン上でも人の呼吸を感じられるなど新しいリアリティが立ち上がってきているのも感じています。皆さんの求めているものも次第に変わってくるのかなと思っており、そうした新しいリアリティにも期待しています。
鈴木康広
現在、このコロナ禍で、東京ミッドタウンに審査員が集まり、そしてインターネットを介してさまざまな場所にいる作家と、この瞬間こうして向き合っているということに特別な意味を感じます。東京ミッドタウンが、その年にしか生まれない作品や作家との出会いによって変化する。僕は、このアワード自体が生きたパブリックアートの一つのかたちを示していると考えています。公共彫刻のように、一見堅牢でスタティックに見える作品は、都市に流れるさまざまな時間のスケールのなかで、情況の変化や行き交う人々との邂逅によって、都市空間に目に見えない変化や揺らぎを生み出し続けています。
TOKYO MIDTOWN AWARDに求められているのは、六本木という場所を媒介にして、今まさに何かを掴もうとしている作家のもとに駆け寄り、その思いや考えに耳を傾け、そこに生まれようとしている作品の可能性を最大限に引き出すことです。そして、商業空間に計画されたなめらかな流れのなかに、ふだんはそこにない非日常の「淀み」として作品を仕掛け、行き交う人に積極的に語りかける場をつくり上げていくことです。
TOKYO MIDTOWN AWARDを通じて作品を生み出すことは、公共空間で作品を成立させるコミッションワークでもあり、問題を回避するために先回りしてコントロールしなければならないのが難しいところだなと感じました。その上で何が起こるかわからない大切な部分を生かす必要があるからです。決められたスケジュールの中で作品を実現していくのは、経験の有無にかかわらず不安なことです。
審査では、作品性だけではなく、実現性というものが欠かせない議論になりました。このアワードに参加するということは、いかに展示をデザインするかということも応募者に求められていると思います。

関連リンク

TOKYO MIDTOWN AWARD 2020 アートコンペ
https://www.tokyo-midtown.com/jp/award/art/