2021年8月10日Award News
今年のアートコンペ、244点の応募作品の中から、1次審査(書類審査)、2次審査(公開プレゼンテーション)を経て、最終審査に進む6作品が決定しました。
各作家が実際に作品を制作し、東京ミッドタウン「プラザB1」にて展示され、2021年9月27日(月)に行われる最終審査(実物審査)にて、グランプリ、準グランプリ、優秀賞を決定します。
各賞は2021年10月14日(木)に発表予定です。
<応募作品名>
borderless
<応募作品コンセプト>
私たち人間は、ほかの生き物の歴史を改変してまで生きていることに普段は目を向けない。本作品に使われている絹糸の原料である繭を作るカイコガは5000年以上前から人々の暮らしに関わり続けたと共に、多くの品種改良が行われてきた。その際に行われる遺伝子操作は本来の遺伝子の歴史においてのバグであると考えた。また、緯糸の再帰性反射糸は注意喚起の意味を持つ。作品を通して自然と人との関係について再考してほしい。
<応募作品名>
The Vision of Nowhere
<応募作品コンセプト>
洞窟のような六本木の通路に私が夢でみる物事を壁に描く。
断片的な夢日記の中のストーリーを一つ大きな物語に繋げる。
美しい裸の人間の動き、生き生きする動物たちが都市にはない風景、実在しないもの現れるを祈る、
5000年前のbushman artのように、壁画に予言や幸運を祈るように人間や動物が描かれるように祈りたい。
描きたい世界について分かりやすくストレートに話していただき、夢と現実を行き来する独自の世界観があることに興味を持ちました。洞窟壁画のようなイメージを実現するには、実際の展示場所に自分の絵がどうかかわっていけるかも重要なので、絵を描くというだけでない少し広い視点で取り組んでください。
<応募作品名>
私がかきました。
<応募作品コンセプト>
私はホームセンター店員です。
あるとき、ペンキをご注文のお客様が「東京ミッドタウンしってるだろ? あれの地下は、ぜ〜んぶ俺が塗ったんだ。」とおっしゃいました。ハッとしました。私が毎日商品のホコリを払うように、どんな場所も無数のだれかの手によってできていると、やっと気がついたのです。
私が働くホームセンターの商品を、私がひたすらかきました。身のまわりを支える、気づきうるすべてのことへ思いをはせながら。
「あなたはアーティストなのか、ホームセンター店員なのか?」という質問に対し、「ホームセンター店員です」と答えた点がまず新鮮で、応募書類に書かれた東京ミッドタウンとの接点についても、こういう切り口があるんだなと驚かされました。今回の作品は、展示に至ったいきさつを知っているか知らないかで感じ方が大きく変わります。どうしてこのようなことをするに至ったのかを知らせることができれば、素晴らしいものになるのではないかと思います。
<応募作品名>
Blue mob
<応募作品コンセプト>
Covid-19のパンデミックによって、 この一年足らずで我々の取り巻く環境やコミュニケーションの在り方はめまぐるしく変化した。通信インフラがフル活用され、自己表現や発表の在り方も大きな転換期に立たされている。私はそんな環境の変化に違和感を感じながらも、受け入れ直視していくような作品を作る。多くの人が行きかうこの東京ミッドタウンの中でまた新たなコミュニケーションをカタチにし、表現したい。
もはや新しい日常空間とも言える「Zoom」という手段と、日常の色々な場面で使われるブルーシートという新旧のものを組み合わせる視点に面白さを感じました。クロマキー合成によって「不在」になるのは誰なのか、画面に鑑賞者が映り込むことに意味があるのかないのかなどについて、実際に検証しながら、ディティールを詰めていってください。
<応募作品名>
ニュー洛中洛外図
<応募作品名コンセプト>
洛中洛外=都市と郊外、です。現代の都市風景を合板の木目にのせることで洛中洛外図をアップデートします。膨張と増殖を繰り返す現代都市、その複製を担っているものの1つに工業的に大量生産される合板があると考えました。合板の木目には工業製品ならではの木目が現れます。もやもやとしてリピート感のあるその木目をホームセンターで見ていたら、たなびく金雲が見えてきました。そんな合板から現代版洛中洛外図を考えます。
©Yuichi Sato
プランの完成度が高く、やりたいことがはっきり伝わってきました。
桂むきによってできた木目模様という、作品にとって重要な部分を大事にしつつも、ベストなサイズ感について考えていただけたらと思います。作品から見える光景が本当に「新しい洛中洛外図」になれるのかも深めてください。
<応募作品名>
なまず公園
<応募作品コンセプト>
鯰が地震を起こすという江戸時代に生まれた伝承をもとに、鯰型遊具、自転車紙芝居、絵画など使ったインスタレーション作品。まるで公園のように、道端の人々が遊具に乗り、紙芝居を見にくる事により人々が自然に集まり巷が生まれる。過去と現代をつなぎ合わせ、人々のつながりも再認識させる。
(左)丹羽 優太
(右)下寺 孝典
最終的なビジョンの大きさ、空間の中で人との出会いやコミュニケーションを起こしてきたこれまでの活動に期待が集まりました。やりたいことを全て盛り込むのではなく、今回の作品のポテンシャルがどこにあるか、アートにおける「本当のサービス」とは何かを再考し、本領を発揮して欲しいと思います。
TOKYO MIDTOWN AWARD 2021 アートコンペ
http://www.tokyo-midtown.com/jp/award/art/
審査員コメント
工芸的な手法を使いながら現代的な現象を表現しようとしていること、工芸の枠を打破しようとしている姿勢が魅力的でした。自分が起こしたい現象に最も適したサイズや色を実現するためには緻密な実験や科学的な裏付けが必要になります。糸の色や太さ、モチーフのサイズ感、人がどのような距離で見るか、光の種類や強さなど、様々な要素を実験しながら、つくっていくことを期待します。