2022年8月26日Award News
アートコンペへの263点の応募作品の中から、1次審査(書類審査)、2次審査(公開プレゼンテーション)を経て、最終審査に進む6作品が決定しました。
<2次審査のプレゼン・質疑応答の様子>
午前の部:
bit.ly/3br9JOF
午後の部:
bit.ly/3zsAjil
各作家が6作品を制作後、東京ミッドタウン「プラザB1」にて実物を設置し、2022年9月27日(火)に最終審査(実物審査)を実施します。
各賞は2022年10月13日(木)に実施する授賞式にて発表予定です。
<応募作品名>
tooloop
<応募時作品コンセプト>
様々な土地の黒曜石を砕き、溶かし、混ぜ合わせ、人工的に塊を生成する。本作は、展示会場で作家が制作した石器と、そこで生じた破片を展示する。黒曜石は産地の歴史を保存した記録媒体と言える存在であり、それを合わせることは土地の記憶を共有させる行為である。石器作りという目的により、軌跡は記憶を保持したまま分散する。東京ミッドタウンという場の構造、そこで生まれる人々の営みからこの作品案が生まれた。
<応募作品名>
空白を晒す
<応募時作品コンセプト>
私は「空白」をあって当然の何かが失われた状態と仮定し、それを受け止めた際に湧き上がる感情の一つ、解放感に着目した。私は空白への逃避、即ち極限の解放を時折強く望む。もしその様な欲が誰の心の根底にもあるのだとしたら、人間は本質的に満たされないと言える。人間は強い欲と自己を持っていながらも支え合わないと生きていけない、センチメンタルの塊なのだ。
プレゼンでの言葉や実作品から、「語る言葉」をたくさん持っていること、表現したいというエネルギーが誰より強いことがよく伝わってきました。今回、初めて公の場で作品を発表することになるということで、嬉しいこともあればダメージを受けることもあるでしょう。自分が実現したいことを大事にしながら、出来る限り、思い切って挑戦してみてください。
<応募作品名>
35°39′55″Nの旅
<応募時作品コンセプト>
この作品は「想像の旅」をすることを目的としています。その旅のルートは、東京ミッドタウンの展示場所と同じ緯度(35°39’55”N)をひたすら西へまっすぐに進む一本線の旅路。自分の足元から繋がる多種多様な世界を再発見し、自分と世界に対する新しい見方を手にすることは、分断されつつある世界を接着するための、一人ひとりができる、ひとつの手段になるのではないかと考えています。
移動しづらい時代に、新しいイメージでの移動を実現させる。どこを歩いていても作者の語らいによって、不自由な世界から解放されるような気がしました。2次審査では、過去作品にあったパフォーマンスしていきながら何かを確認していくような良さが失われ、要素が過剰になっている印象があったので、作家としての自身の根源に立ち戻り、原点からしっかりと作品を見つめ、どんなアウトプットをするか考えてみてください。
<応募作品名>
Sky Forming Apparatus
<応募時作品コンセプト>
空という漢字は「穴」に由来し、太古の人間は頭上に広がる大きなからっぽの中から神々が舞い降り、雲や雷が出てきては消えてゆくと考えていました。
無と有の両方の側面を持つ空は、いつの時代も人間にとって五感を惑わす美しいものです。
この作品は、空の原理を応用した特殊なガラスが生む色の移ろいを、パラボラアンテナで映し取っています。さまざまな人が行き交う東京ミッドタウンにおいて、いま鑑賞してもらいたい作品です。
コントロールが難しい新素材を果敢に制作に取り入れ、緻密な実験を重ねてクオリティを追求している点に審査員の評価が集まりました。プロダクトっぽくならないよう、アート作品としての精度を上げていく必要があるように感じました。作品の置き方、一つひとつの物のありよう、リズムのつくりかたなどに神経を配った最終形をぜひ見せてください。
<応募作品名>
But he has nothing on at all
<応募時作品コンセプト>
バレリーナを目指していた頃、舞台に立つと無意識で空っぽな身体が誰かに何かを演じさせられているように感じた。その感覚は日常にも潜んでいて、現代には気づかないうちに演劇的な構造に参加させられている人がたくさんいる。この作品では、SNSで集めた着飾られた犬たちをモチーフに社会の中で”本当の自分ではない誰か”を無意識に演じさせられている人々の肖像を描く。私たちは大きな劇場の中で踊らされている。
作家自身の中でつくりたい作品が非常にクリアであったと思いました。なぜ陶芸というメディアで制作に挑んでいるか、その素直な動機や創作への姿勢が理解できたと同時に、そこから生み出される映像作品のクオリティも高く、感心させられました。計画している劇場的なインスタレーションのスケールや、全体としてどのような構成を想定しているのかが気になりますが、映像と連動させながら、よい作品に仕上げてください。
<応募作品名>
六本木の肌理
<応募時作品コンセプト>
公園のふわふわとした紫陽花、ゴツゴツした小石の舗装、ベトベトしたドーナッツ、ツルツルとしたスーパーの魚、ガチャガチャした路地裏のゴミ捨て場、ガタガタした雑居ビル、のっぺりとしたガラスの高層ビル。大小さまざまなスケールで見出された六本木という都市の肌理を、3Dスキャンによって収集し、デジタルファブリケーションと手作業によって再び物理空間上に製作することで、触覚的な都市空間体験を考察する作品です。
実物を見てみたいと思わせる魅力的な提案でした。ただし、全体的に説明的になりすぎる傾向があり、その点については、審査の過程で様々な意見が出ました。感覚を表現することを磨き上げていく上で、もしかしたら視覚情報は最終的にいらない可能性があるかもしれません。フォーカスする要素を決めて、説明抜きで感じとれるような美術作品としての強度の上げ方などを考えてみてください。
TOKYO MIDTOWN AWARD 2022 アートコンペ
http://www.tokyo-midtown.com/jp/award/art/
審査員コメント
石器と鏡の一貫性、実地で石器を制作し理屈だけではなく体現されているところなど、話を聞いて深く納得しました。過去作は素晴らしいと感じましたが、今回の作品プランはわかりづらく、イメージが掴みにくかったところもありました。石器にはじめて触れる人にも向けた目線を入れてもらえると、楽しく考えられる作品になるのではないでしょうか。