デザインコンペ

2021年 結果発表

TOKYO MIDTOWN AWARD 2021デザインコンペ結果発表

デザインコンペ概要

テーマ

THE NEXT WELLBEING

パンデミックにより激変した世界で、わたしたちの生き方も大きく変わりました。 自分自身の、そして社会全体の “これからのウェルビーイング(THE NEXT WELLBEING)”とはどんなものでしょうか? その答えになるような、デザインやアイデア、プロジェクトを募集します。

審査員 石上 純也、伊藤 直樹、えぐちりか、川村 元気、中村 勇吾
グランプリ(賞金100万円)─── 1点
優秀賞(賞金 各30万円)───3点
ファイナリスト(賞金 各5万円)─── 6点
  • ※グランプリ受賞者を世界最大規模の「ミラノサローネ国際家具見本市」開催中にイタリア・ミラノへご招待します(グループの場合は2名まで。新型コロナウイルスの影響で招待の内容が変更になる場合があります)。
  • ※2021年は審査の結果、優秀賞が4点、ファイナリストが5点に変更となりました。

応募期間 2021年6月18日(金)~7月19日(月)
応募総数 1,122点

グランプリ

窓時計

  • 窓時計
  • 受賞者:

    onegi
    太田 文也(左)
    デザイナー/コピーライター
    東京都出身
    根岸 桃子(右)
    デザイナー
    東京都出身
    CAMOTES 太田 文也、根岸 桃子

室内で過ごすことの多い、現代人と太陽の関係をリデザイン。時計を窓に飾ることで、外を見る行為を日常化。自律神経を整えると言われる、太陽の光を心とからだに。そんな小さな豊かさが、わたしたちを少しだけ健康にしてくれる。

石上 純也 講評

アイデアが斬新でありつつもシンプルで緊張感があった。デザインの着眼点を評価したい。一方で模型は、中心部分の存在感が大きいような気がした。窓からの景色を見ていて、気付いたら時計を見るくらいのバランスが良いのではないか。時計の中心部の大きさや針の形は、この提案のデザインするべき要素の唯一の部分であり、その部分の詰めを早い時点で、諦めているように見えた。そういう意味で、アイデアは秀逸であるが、設計は評価できないと感じた。アイデアと設計の質を両立させるのが、デザインの最も重要な部分であるので、その部分が欠けていることがとても残念だった。

伊藤 直樹 講評

細かく検証する姿勢と作品コンセプトを高く評価した。実際に窓に吸着させた時にプロダクトが傾かないように、パーツを軽くしたり小さくするなど、改善ポイントをブラッシュアップ出来たら、かなりポテンシャルがあって売れそうな作品だと感じる。他のデザイナーが一度は考えたことがありそうなアイデアではあるが、誰もがプロトタイプの段階で挫折したのでは。それを乗り越えて商品化して欲しいという期待をこめてグランプリに選出した。

えぐちりか 講評

もうすでにある幸せに気づいたり、このプロダクトがあることで幸せを感じられる、という作品だった。形がもうちょっとよければ自分でも欲しいし家に置きたくなる作品。形の課題はあるものの、アイデアの種がものすごくシンプルでわかりやすくて、グランプリを選ぶ時に、これが本当に推しだなと思えた。

川村 元気 講評

一番好きな作品。家の中でパソコンやスマートフォンばかり見ていて、「外を見る」という行為すらしなくなっているこの時代に、この作品が窓にあるだけで、天気の移ろいや空の機微に自然と気付かせてくれる。時計があることで外を見るようになる。デザインの提案によって、視点や行動が変わるきっかけを提案している点がよかった。

中村 勇吾 講評

「時計の背景に風景がある」というコンセプトが、一瞬で心を奪われるような、そういう企画の切れ味の魅力が、一番の選定ポイントとなった。ただ、2次審査の時の模型を見ると1次のプレゼンシートの印象よりもよさが下回ったと感じる部分もあったので、初期の大事だったことを思い出して、そこをカタチとして研ぎ澄ましていってほしい。

優秀賞

smokeho

  • smokeho
  • 受賞者:

    稲垣 竜也
    デザイナー
    埼玉県出身
    稲垣 竜也

温かい料理の湯気が食欲をそそり、冬の吐息や、夏の朝靄が季節の訪れを予感させる。線香の一筋がフワフワ、クネクネと伸び上がる。煙はどこか心地よいものに付き纏っているようです。揺蕩う煙を捕まえて眺めてみる。唯それだけで、どこか遠くの場所や時間、複数の形の中にトリップできそうな気がしてきます。これは孤独を愛でる道具です。「満たされた状態」はそんな些細な状況から、ゆっくりと浸透していくものだと思うのです。

石上 純也 講評

いままで審査に関わってきた中で、一番好きな作品で、自分の中ではこれがグランプリだった。作家自身の繊細な視点や価値観がプレゼンから伝わって好印象を持った。模型の造形も、仕上がりが良かった。一般的に香りの範囲のコントロールは難しいが、そのスケール感をコントロールして、小さな範囲での現象に昇華させ、香りを楽しめるという点が、素晴らしいなと思いました。

伊藤 直樹 講評

自分も香りが好きでいろいろ試している中で、煙の流れを観察するという行為を促すプロダクトは意外にありそうでなかった。実際に流れ出た煙が縁に沿って遡上していく様は本当に素敵で、実際に家で見てみたいという衝動にかられた。

えぐちりか 講評

煙を見ることで癒しが生まれるのだな、と感じさせてくれた作品だった。プレゼンでは会場の都合で火気が使えず、実際煙は見られなかったものの、実演されていればグランプリになった可能性があったと思う。アートピースとしての可能性も秘めており、量産ではなく、アートオブジェとして実現する方向性もありなのではと思った。

川村 元気 講評

煙を閉じ込める様子と、ガラスの器に伝っていく様子がどのように美しくなるのかという点を科学的な観点やフォルムの追求など、様々な視点から検証していければ、より魅力が増す作品のように感じた。

中村 勇吾 講評

僕としてはこのアワードの審査を始めてから、初の満点評価をつけた作品で、自分の中ではグランプリだった。例えば焚火でも、炎が主役で煙は脇役だったところを、煙はこんな風に閉じ込めると、じっと見続けてしまうようなものだったんだっていう「煙を見る」魅力を再発見させる、新しいカテゴリーを切り開くようなデザイン提案になっていた。あったら絶対買いたいし、何ならこの模型を売ってほしいくらい。

草むらになるゴミ袋

  • 草むらになるゴミ袋
  • 受賞者:

    タタラゼミエムニ
    工藤 外四(左)
    学生
    兵庫県出身
    長谷川 皓士(中央)
    学生
    大阪府出身
    金 璽民(右)
    学生
    京都府出身
    タタラゼミエムニ 工藤 外四、長谷川 皓士、金璽民

収集場所に積まれた際に草むらに見えるゴミ袋です。 豊かさや人間らしさを追求する事は、同時に、ゴミや資源、自然環境問題の発生を伴います。それらの問題を意識した上で幸福を追求することをTHE NEXT WELLBEING と捉え、ゴミと私たちの生活の関係を考えなおすきっかけとなるプロダクトを制作しました。

石上 純也 講評

テーマ性・メッセージ性ともに非常に強く、プロダクトとして世の中に広がったら、“ゴミ”の価値観に変化を生む良い作品。機能的に世の中に存在するものは、それがある風景へどのように影響するかの配慮が足らない部分が多いが、デザインの力でその課題を解決していこうという意識が素晴らしい。実現に向けて、印刷面積を小さくするなどコスト部分に絞って詰めていけると、よりエッジの効いたものになると思う。

伊藤 直樹 講評

チームのデザインに対する向き合い方にとても共感した。時間をかけて観察・検証をしている痕跡が見られ、プロダクト、パッケージ、映像、プレゼン資料などすべてのデザインがとても丁寧につくられている。プレゼンテーションも素晴らしかった。

えぐちりか 講評

ゴミ捨て場のげんなりする風景を、逆に素敵な空間に見せるところまで持って行けたのはすごいなと純粋に思った。短い準備時間にも関わらず、模型が丁寧で、パッケージも熟考されていて、「グランプリとるぞ」という、どこもつっこまれる所がないところまでプレゼンの完成度を上げてきたというところが、とても良かった。日本中でこの景色を実現してほしい。

川村 元気 講評

誰もが潜在的に不快感を感じている“ゴミ”の問題に対して、デザインの力で改善策を提案している点に感銘を受けた。非常に好きな作品だ。

中村 勇吾 講評

1次審査でプレゼンシート見た時は、自然の模様や葉っぱの模様をプリントしたものって、すごく安っぽく映りそうだと思っていた。だから2次で提案される模型は、「安っぽくなるんだろうな」と想像していたところ、意外とそんなことはなくて、網点や透明感の処理などで、不思議としっくり見ることができた。この作品のデザイン力の高さを感じた。

ゴミからできたゴミ箱

  • ゴミからできたゴミ箱
  • 受賞者:

    有留 颯紀/小笠原 勇人
    有留 颯紀(左)
    デザイナー
    横浜市出身
    小笠原 勇人(右)
    コピーライター
    東京都出身
    有留 颯紀/小笠原 勇人 有留 颯紀、小笠原 勇人

ゴミ箱は廃棄物と生活空間の狭間となる特異なプロダクトですが、どれほど薄汚れてもそれ自体をゴミにすることはなかなかできず、それが空間の淀みに繋がります。そこで再生紙のパルプモールドでできたゴミ箱を作りました。汚れ具合に応じて、これ自体も簡単にゴミとして破棄できます。素材に再生紙を用いることで環境に負荷をかけず、生活の「負」を溜め込む容器そのものの代謝も良くする、そんな次の生活スタイルの提案です。

石上 純也 講評

造形や素材の選択、形態などのデザイン力が優れている。商品化する過程で、商品の形式・販売方法などのデザイン以外の点、価格帯などに気をつけながら進めていけると、突破力のある商品になるのではないでしょうか。

伊藤 直樹 講評

プロダクトとして自分でも欲しいと思った。10個、20個単位で買えたり、10個1000円、など1個の単価を低くすることで、家の中だけではなく、ホームパーティーや外でごはんを食べる時のように一時的に人が増えるシチュエーションでも使えそうである。シンプルではあるが、ディテールに凝ったとても好きな作品だ。

えぐちりか 講評

今回の作品の中で一番「家で使いたい」と思った。生活の中で最後まで使うことを考え、テクスチャを活かした形を真剣にデザインしていて、プロダクトデザインに長けていると感じた。逆に上手すぎて自然で、弱く見えてしまったところもある。商品化したら一番売れそうな作品なので賞をとったことで満足しないで、世の中に出すところまで実現してほしい。

川村 元気 講評

企画がよく練られており、素材の研究、協力企業の選択など実現化へむけた姿勢に感心した。作品の色味のデザイン、形態など、ゴミからできたことの面白さを突き詰めていけばさらに飛躍を期待できる。

中村 勇吾 講評

ゴミ箱は生活空間とゴミの世界の中間のエリアにあるものだというゴミ箱の捉え方自体がすごく新鮮だった。コンペだと、狙って面白みのある特徴的なカタチを提案しがちだが、あえて「普通に良い」と思えるものを、勇気をもって提案してきたところが、逆に評価できるなと思った。

視点を変える定規

  • 視点を変える定規
  • 受賞者:

    福島 拓真(中央下)
    デザイナー
    神奈川県出身
    関口 遼(右)
    アートディレクター
    東京都出身
    柳澤 星良(左)
    学生
    岡山県出身
    福島 拓真、関口 遼、柳澤 星良

メモリと数字が一つに合わさった定規です。本来、メモリの上に数字が印字されていますが、数字を縦にして並べることで視点を変える事で正面からみた時メモリになる定規です。使う時だけでなく、使っていない時もインテリアとして機能します。パーソナルな生活リズムが主流になった今、身近な道具の美しさが幸せにつながるのではないでしょうか。

石上 純也 講評

デザインの発想力・着眼点は素晴らしいが、定規として機能性をもう少し追及してほしかった。定規としての機能性を省くのであればもっと、透明な範囲を減らし、文字の範囲だけをアクリルで覆い文字の「立体性」をより強調するようなデザインにするなど、また、“測る”機能を大切にするのであれば、分度器など他の計測の道具など、多角的な提案も見たかった。

伊藤 直樹 講評

人間は、物を3次元ではなく平面で捉えがちである。この作品は名前のとおり「視点を変える」道具である。定規としての機能はあまり高くないが、部屋に飾っておくアート作品としての要素も帯びている。「多角的にモノを観察したほうが良い」というメッセージがすごく伝わってくる素晴らしい作品だ。是非、商品化の際は力になりたい。

えぐちりか 講評

テーマ(THE NEXT WELLBEING)に対して「視点を変えると身近なところから新しい発見がある」というコンセプトで返してくるチャレンジを評価した。パッケージが余計だったり、他のプレゼンターに比べて模型のクオリティが惜しかった。アイデアの種の部分はとても良いので、形を追求したり、アート性を高めるなどして商品化をして世の中に広がっていってほしい。

川村 元気 講評

プレゼントされた時にちょっと嬉しくなる類の作品と感じた。アイデアが面白く、装飾性も高く、眺めたり飾ったりするようなインテリアにもなりうるところも興味深い。2次審査のプレゼンでは、「実用性」と「装飾性」のバランスがどちらにも振り切れていないところが気になった。

中村 勇吾 講評

倉俣史朗的な透明なアクリルに何か埋まったもの、タイポグラフィが物質化されてるもの、っていう、僕の「2大好き」なのが来た!と思った。個人的にすごい好きですが、「これ定規である必要あるかな?」「この良さを応用できるものって、定規以外にも実はあるんじゃないかな」とずっと考えてしまった。

ファイナリスト

flower dancer

  • flower dancer
  • 入選者:

    時岡 翔太郎
    デザイナー
    兵庫県出身
    時岡 翔太郎

暮らしに自然を取り入れる習慣は、心を和ませ、日々を穏やかにしてくれます。これは、風を受けてゆらゆらと揺らぐ花器がつくる「癒し」のデザイン。空気の動きとともに踊り、花の表情を変化させてゆく。こちらに語りかけるように頷き、親しくなれたように思える。そんな、自然との心地よい関係が、ささやかな幸せを生み出します。

川村 元気 講評

1次審査のプレゼンシートからの飛躍が素晴らしかった。風を受けて揺れ動く様子は、まさに花がダンスしているようで美しかった。実際に花を活ける観点から、水の容量や間口の大きさなど、検証の精度が高めることでよりよい作品になるだろう。

花火線香

  • 花火線香
  • 入選者:

    波多野 現
    建築士
    北海道出身
    制作協力:
    ガラス:小樽 il PONTE
    線香台:金属工房 nico craft
    お香:株式会社 松栄堂
    波多野 現

「花火線香」はお家で楽しむ線香花火です。着火時は素敵な香りのお線香。香りの中、瞑想や語り合ってもいい。火は中心に来た時、線香花火となってガラスを彩ります。それはまるで部屋の中の花火大会ー花火の後は元のお線香。残香の中、余韻に浸れます。コロナ禍の先には輝く未来が待っている。そして明けた後もあの大切な時間を忘れないために。私たちの「THE NEXT WELLBEING」。今夜も「花火線香」を焚きませんか?

石上 純也 講評

ポエティックで素敵な世界観を持つ作品である。部屋の中に花火の風景を作りたいと思うことは、部屋の中にいることの多い時世にマッチしている。一方で模型は、作者のこだわりが膨らみすぎてしまった印象。吊す金具の部分の存在感が強すぎる印象を受けたり、もしガラスが重要なのであれば、ガラスの存在感や薄さなど、より詰められると良いと思った。線香花火の繊細さを追求できたらより素晴らしくなると思います。

ふくふく金魚鉢

  • ふくふく金魚鉢
  • 入選者:

    ソー ユンピン
    学生
    マレーシア クアラルンプール出身
    ソー ユンピン

金魚が泳ぐことにより水の波で揺らめく様な、薄く成形した透明な金魚鉢です。豊かな生活は、良い心や良好的な関係も指すことだと考えました。柔軟化された鉢(関係)では、単なる水の中に金魚が泳ぐ姿を愛でるだけでなく、柔らかい鉢を触ることにより水の温度、金魚の動きの波を感じて、自分の気持ちも金魚に伝えられることを目指して設計しました。大切にするという気持ちで、人と金魚の新しい関係が生まれれば嬉しいです。

中村 勇吾 講評

柔らかい金魚鉢っていうのがすごい新鮮で、実物を見たくなったプレゼンだった。しかし、シリコンでは柔らかい金魚鉢をなかなかつくれないということで、模型としてそれを実現できず、見ることができなかったところが残念だった。

富士山お香

  • 富士山お香
  • 入選者:

    井下 恭介
    デザイナー
    熊本県出身
    井下 恭介

燃える過程で灰が雪化粧のように変化していく、富士山を模したお香です。香りがメインであるお香に、視覚的な美しさの要素を取り入れる事で、「お香を焚く」という行為が人の生活をより豊かなものにしてくれるのではないかという思いから制作しました。煙と共に変化していく小さな富士山を見ながら、ゆっくりとした時間を過ごして頂けると嬉しいです。

伊藤 直樹 講評

とても時間をかけて検証した跡が見られ、デザインに対する誠実さを感じる。富士山というモチーフが「またか」と、少し食傷気味ではあるものの、お香の形状、パッケージデザイン、文字組みなど、デザインの完成度はとても高いと思う。

THE GATHERING CHAIRS

  • THE GATHERING CHAIRS
  • 入選者:

    平岡 美由紀
    学生
    兵庫県出身
    平岡 美由紀

小学生のウェルビーイングのための椅子です。小学校は、人との関係を築き始める必要不可欠な時間です。しかし、ウイルスにより、教室内でも距離をとり、休み時間も安心して遊べない中で、子どもたちは社会性を育めず、長期的にも悪影響を及ぼす可能性があります。今後も新しいウイルスがまた流行しないなど、誰に分かるでしょうか。子どもたちが安全な距離を保ちながら遊び心を持って集まれるような、これからの椅子を提案します。

えぐちりか 講評

終始笑顔で、プレゼンが秀逸だった。人としても応援したいなと思えた。作品はこのアワードの受賞向きではないかもしれないが、実際にこのプロダクトが置いてある空間はきっと素敵に見えるし、ここで子どもが遊んでる姿は、文句なしにハッピーな感じに見えるだろう。入賞には至らなかったが、実現してほしいと思わせる説得力がある作品だった。

審査員総評

  • 石上 純也
  • 石上 純也
    (建築家)

    1次審査の段階から、自分の中にすっと入ってくる作品が多かった。2次審査に進んだ作品の模型を見たとき、良い作品が仕上がってきたと実感できた。今の社会状況もあるが、個人的には「デザインには優しさが必要」と思っている。今回選出した10作品には、どの作品にも優しさが含まれていて、その価値観を共有することができた。

  • 伊藤 直樹
  • 伊藤 直樹
    (クリエイティブディレクター)

    自分が審査員として関わらせてもらって以来、一番粒ぞろいの作品がそろった年だと感じる。正直、1次審査では今年は作品のクオリティが心配だと感じたが、2次審査までの各作品の成長がすごかった。理由としては、「ステイホーム」で、考え、手を動かし、じっくり検証し、物ごとを観察する時間ができたからではないかと思う。「ステイホーム」はデザインする人間にとっては、逆にチャンスであると、改めて痛感した。

  • えぐちりか
  • えぐちりか
    (アーティスト/アートディレクター)

    「すでにある幸せに、視点を変えると気が付ける」「身近なものに幸せがある」ということを感じさせてくれる作品がすごく多かった。1次審査では全体のクオリティを心配したものの、2次審査では模型やプレゼンの完成度が非常に高かった。今まで審査をしてきた中で一番、商品化できそうな作品が多かった。どれも甲乙がつけがたく審査が難しかった。それくらい今までで一番よい作品が多かったと感じた。

  • 川村 元気
  • 川村 元気
    (映画プロデューサー/小説家)

    「家にいる時間をどのように過ごすか」に思いを巡らせた年だと改めて感じた。 より心地良く生きること、家の中から世界を少しでもより良くしていこう、という提案が多く見られた。 1次から2次審査にかけて飛躍的によくなった作品が多かったので、審査をしていてとても楽しかった。 自分が携わった審査の中でも、今回が一番ヒット商品が生まれるのではと感じた。

  • 中村 勇吾
  • 中村 勇吾
    (インターフェースデザイナー)

    今年のテーマ「THE NEXT WELLBEING」は主催者がコロナ後の社会を念頭において提案されたものであったと感じる。 ステイホームが長びく環境下で、これまではあまり意識することがなかった「生活に身近なもの」や「身の回りのもの」に関する作品を選んでいる自分がいて、環境の変化により選ぶ作品が大きく変化したことに自分でも驚きを感じた。「選ぶことを通して自分の感受性の変化」に気づく、そういう印象的な年だった。今回選出された作品は、1次審査のシートから2次審査でのフィニッシュのクオリティが大きく上回り、とても感動的だった。

審査風景

デザインコンペ総括

14回目となるデザインコンペでは、「THE NEXT WELLBEING」をテーマに掲げ、従来通り応募時点で39歳以下という条件のもと、継続で5名の審査員に審査を行っていただきました。

パンデミックにより2020年から起こった社会の変化を、今回もコンペを通して感じる印象的な年となりました。テーマとして掲げた「THE NEXT WELLBEING」は直訳すると、“次なる幸せ”。応募総数1,122通りの幸せのデザインに対する多様なアプローチが寄せられました。パーソナルなものからパブリックなもの、オーソドックスなものから新たな視点での提案まで、実に幅広いことが印象的でした。また一貫して“優しさ”を感じるものが多かったのも時勢を反映していると言えるでしょう。

大きな変化の中、嘆くことなく次の時代の価値観をつくろうとしているクリエイターとしての姿勢に、感銘を受け、主催者一同このアワードの意義を再認識しました。

「デザイン力」「提案力」「テーマの理解力」「受け手の意識」「実現化(含む商品化)につながる」という5つの審査基準のもと、1次審査(書類審査)で10点を選出、2次審査ではプレゼンテーション・審査員との質疑応答を行い、グランプリ1点、優秀賞4点、ファイナリスト5点を決定いたしました。本来、優秀賞は3点のところ、審査過程で議論をつくしたものの「僅差で優劣をつけられない」という審査員のコメントを受け、優秀賞を4点としました。

1次審査の一部および2次審査のプレゼンテーションをリモートで行うなど、時代を反映し、ハイブリッドなコミュニケーションのもと審査を行いました。今回特記すぺき事項としては、審査員がそろって「1次審査から2次審査にかけて飛躍的に作品がよくなった」と2次審査での応募者のプレゼンテーションの仕上がりを称賛していたことです。力を備えた若手のつくり手の存在を再確認し、未来への希望を感じることができた年でした。

例年にも増して長時間を要した最終審議を経て、商品化・実現化への期待が大きく膨らむ、計10作品を発表できることを喜ばしく思います。これまでと同様、今回の受賞・入選作については商品化・実現化を目指していきます。また、ご報告として、昨年のグランプリ作品の「uskin」の商品化が決定しました(商品名「hadawa」)。今後も、受賞者・入選者とのコラボレーションなどの支援をさらに推進し、本アワードがデザインに関わる皆さまの目標であり続けられるよう尽力してまいります。

あらためまして、応募をいただいた皆さまに感謝の意を表します。ありがとうございました。