アートコンペ

2022年 結果発表

TOKYO MIDTOWN AWARD 2022アートコンペ結果発表

アートコンペ概要

テーマ

応募者が自由に設定

東京ミッドタウンという場所を活かしたサイトスペシフィックな作品を募集します。
テーマを自由に設定し、都市のまん中から世の中に、そして、世界に向けて発信したいメッセージをアートで表現してください。

審査員 大巻 伸嗣、金島隆弘、クワクボリョウタ、永山 祐子、林 寿美
グランプリ(賞金100万円)─── 1点
準グランプリ(賞金50万円) ─── 1点
優秀賞(賞金 各10万円)─── 4点
  • ※グランプリ受賞者を、University of Hawaiʻiのアートプログラムに招聘します(新型コロナウイルスの影響で副賞の内容が変更になる場合があります)。
  • ※2022年は審査の結果、準グランプリは2点、優秀賞が3点に変更となりました。 また、作家の将来性に期待して授与される賞として「審査員特別賞」を受賞作品の中から1点選出しました。

応募期間 2022年5月9日(月)~5月30日(月)
応募総数 263点

グランプリ

But he has nothing on at all

  • But he has nothing on at all
  • 受賞者:

    中田 愛美里
    アーティスト
    東京都出身
    素材:セラミック、映像、木材、布
    中田 愛美里

バレリーナを目指していた頃、舞台に立つと無意識で空っぽな身体が誰かに何かを演じさせられているように感じた。その感覚は日常にも潜んでいて、現代には気づかないうちに演劇的な構造に参加させられている人がたくさんいる。この作品では、SNSで集めた着飾られた犬たちをモチーフに 社会の中で”本当の自分ではない誰か”を無意識に演じさせられている人々の肖像を描く。私たちは大きな劇場の中で踊らされている。

大巻 伸嗣 講評

テラコッタ彫刻とその映像作品は、自身の経験を背景に、彼女を取り巻く今という時代と絡められ不思議と見入ってしまう作品となった。一見可愛らしさを持つ彫刻を見つめるほどなぜか抜かれた目の穴の中へ引きつけられその空っぽな空洞に埋まらない現代の病を感じさせる。自画像であると作者本人は話していたが、見るものの中に存在する空洞に何らか響いてくるものがある。小さなものが示し映してくれる世界の中に大きな問題を見つけることができるのではないでしょうか。不自由な彫刻からの解放を含め表現の可能性を感じる作品である。

金島 隆弘 講評

自身が扱う素材に対する技術力、表現したい内容と素材との一致、陶器と映像との組み合わせによる表現、丁寧な制作による高いクオリティと、総じて完成度の高い作品でした。映像作品と陶器の作品が展開する舞台との関係性、作品の配置方法、内容が少し説明的すぎる映像の内容など、気になるところもいくつかありましたが、今後の課題として意識を持って制作を続けていけば、これから更に良い作品ができていくと思います。今回の受賞で満足せず、引き続き頑張ってください。

クワクボリョウタ 講評

映像の中で自在に変形して動く犬たちが最後に並んで止まるや、画面の前に完全に同じ姿の陶器が立っていることに気づき奇妙な感覚を覚えました。 映像中の犬たちは、先に制作した陶器を3Dスキャンしたモデルで作られているので、無意識的な細部まで実物と形状が一致しているのです。また、映像のスクリプトはCGをモデリングしながら半ば即興的に書かれた物だといいます。そのため作品体験の時系列は作品が作られた時系列と真逆ということになります。そのことが陶器の不可逆性とコントラストを成しておりとても面白いと思います。

永山 祐子 講評

今回の作品、さらには審査に加わった去年から見てきた作品の中でも、最も説明なしに胸に迫る作品だと感じた。目の前に並ぶ抜け殻のような陶器の犬たちが画面の中で感情を持った個体として登場する。画面の中の映像はとてもメルヘン調でありながらゾッとするような触感に訴えかけるような狂気をはらんでいる。東京ミッドタウン界隈にもここに登場するような可愛らしいペットたちが行き交う。その風景と重なり、よりここで展開される物語がここだからこそ描かれるものとして、多くの人にダイレクトに訴えかけるものとなっていると思う。

林 寿美 講評

童話(『裸の王様』)やテラコッタ製の犬、劇場風の仕掛け、アニメーションなど、ともすれば幼稚で凡庸になりがちなモティーフや手法を用いながらも、甘くなりすぎることなく、「空っぽな自分」というシンプルなメッセージが、説得力をもって強く胸に刺さりました。今後は、より多層的な表現を目指してください。テーマも含め、これから作品がどのように変化していくかに大きな期待を寄せています。

準グランプリ

35°39'55"Nの旅

  • Blue mob
  • 受賞者:

    片貝 葉月
    美術作家
    神奈川県出身
    素材:ミクストメディア
    片貝 葉月

この作品は「想像の旅」をすることを目的としています。その旅のルートは、東京ミッドタウンの展示場所と同じ緯度(35°39’55”N)をひたすら西へまっすぐに進む1本線の旅路。自分の足元から繋がる多種多様な世界を再発見し、自分と世界に対する新しい見方を手にすることは、分断されつつある世界を接着するための、ひとりひとりができる、ひとつの手段になるのではないかと考えています。

大巻 伸嗣 講評

2次審査のプレゼンからガラッと変わった作品にまずビックリした。作者から話を聞いて思い切った挑戦であり、この作品にかける想いが伝わってきた。コロナ禍で移動が困難であった時も終わりを告げようとしている中、この作品はネット情報での旅ではなく身体を離脱させたイメージの世界の旅へと解放させてくれたように思えた。私たちにとってかけがえのない身体ではあるが、彼女によって芸術は、それを自由に解放させる力があることを示してくれた様に思える。

金島 隆弘 講評

今まで制作してきた作品や自身のキャリアを踏まえると、今回の作品では削ぎ落とす勇気が感じられる一方で、何かを残す勇気も必要だったのではなかったかと思います。丁寧に制作された音源による作品へ意識を向けるため、過度なオブジェは不要かとは思いますが、鑑賞者に作品として気づかせること、意識を西に向け、地球を一周して東から戻ってくる流れなど、作品の重要な要素を抽出して自身の手で制作できる何かで表現ができれば、作品は更に良いものになったと思います。

クワクボリョウタ 講評

作品の本質は当初のプランと変わらないものの、物理的には展示条件に照らして思い切った変更がありました。それは今までの作者の制作スタイルを大きく覆すものでもあり、大変勇気のある決断だったと思います。 オンラインの音声へのQRコードが会場に置かれているため、会場に行って初めて音声を聞くことができるのですが、音声は3時間近くあるため、たいていの人は別の場所で聞くことになります。その体験の設計は適切だったのかについては検討の余地があります。

永山 祐子 講評

片貝さんの声には独特の響きがあり、それがスッと聞く者の中に入ってくる。耳から響く音のみで地球全体のスケールを感じさせる、これほどまでにギャップを持った表現はなかなかない。東京ミッドタウンを起点にひたすら西に向けて移動していく脳内の架空の身体と今ここにいる身体が乖離していき、約3時間の幽体離脱を体験する。削ぎ落とされた表現で完成度の高い作品だと思った。一方で今回の賞の状況で行き交う人とのコミュニケーションの取り方には問題があると感じた。

林 寿美 講評

よくぞここまで思い切って「見せない」ことにしたものだと、その英断に感服しました。東京ミッドタウンと同じ緯度にある世界の場所の景色をゆっくりとなぞっていく、その語り口、テンポ、声音……。綿密なリサーチと全体をまとめる構成力によって、ポエティックなパフォーマンスに結実したと思います(唯一の難点は3時間と長すぎること)。旅が出来ないフラストレーションを抱えた今だからこそ、多くの人に共感されることでしょう。

Sky Forming Apparatus

  • The Vision of Nowhere
  • 受賞者:

    studio SHOKO NARITA
    成田 雄基(右)
    アーティスト、デザイナー
    東京都出身
    平澤 尚子(左)
    アーティスト、デザイナー
    千葉県出身
    素材:アルミ、アクリル、分相ガラス、LEDライト、ステンレス
    協力:UNOU JUKU by AGC株式会社
    studio SHOKO NARITA 成田 雄基、平澤 尚子

空という漢字は「穴」に由来し、太古の人間は頭上に広がる大きなからっぽの中から神々が舞い降り、雲や雷が出てきては消えてゆくと考えていました。 無と有の両方の側面を持つ空は、いつの時代も人間にとって五感を惑わす美しいものです。 この作品は、空の原理を応用した特殊なガラスが生む色の移ろいを、パラボラアンテナで映し取っています。 さまざまな人が行き交う東京ミッドタウンにおいて、いま鑑賞してもらいたい作品です。

大巻 伸嗣 講評

まだまだ実験的な装置であるが、作品が簡単にできるのではなく、まだまだ向こう側にあり、空想する余地があるところは、もっと大きくなる可能性を持っているという事だと思います。今後彼らが抱いた夢はきっとどこかで大きく花咲くだろう。早くこの作品のスケールに見合う場所で展示がされる時を楽しみにしています。

金島 隆弘 講評

高度な技術や素材を組み合わせながらの完成度の高い作品で、その技術力には関心させられた一方、鑑賞者の視点や、タイトルとの関係性など、作品そのものではない部分にも一歩踏み込んで意識を持つことができれば、作品は更に良いものになったと思います。左右への人の流れが強い展示場所、中心の構造に集まりがちな視点、鑑賞者の立ち位置など、鑑賞者の体験や導線も作品の一部だと考えながら制作できれば、自分が表現したい世界観に作品をより近づけられたと思います。

クワクボリョウタ 講評

光に対する追求が形になった作品だと思います。とはいえ、純粋な光の現象の側面だけでなく、装置の物としての存在感にもこだわりがあるように見受けました。形容が難しいのですが、現代に作られた装置というよりも、遺跡から出土したオーパーツのような変わった存在感を感じます。 鏡面のわずかな歪みなど、完成度が高まったがために逆に残された不完全性が目立つという課題が残されています。今後の活動で突破されることを期待しています。

永山 祐子 講評

1次審査の時から最終的に考えている現象がきちんと完成するのだろうかと気になっていた作品であった。現地で展示された作品は見事に分光ガラスと3つの小さな光源によって光のスペクトルを丁寧にコントロールし、空の色を小さなパラボラの中に再現することに成功した。静かに移りゆく光の色。吸い込まれるように眺め入ってしまった。美しい光の色を完璧に見るには定点に立つ必要がある。しかし、横から眺めた時の反射する光の輪がぬめっと形を変えていく姿も魅力的だ。

林 寿美 講評

「空をつくる装置」というある種ロマンティックなコンセプトから、もっと情緒的な作品を想像していましたが、実作品を見ると、むしろ、デジタルとリアルが混在する現代において鈍感になってしまったわたしたちの視覚を活性化するための(文字どおり)装置であることがわかりました。宇宙で活用されるなど、今後大きく展開する可能性を孕んだプロトタイプとして享受できる作品だと思います。

優秀賞

空白を晒す審査員特別賞

  • 空白を晒す
  • 受賞者:

    馬蹴 れんな
    学生
    京都府出身
    素材:メディウム、木パネル、ビニールシート、絵具
    馬蹴 れんな

私は「空白」をあって当然の何かが失われた状態と仮定し、それを受け止めた際に湧き上がる感情の一つ、解放感に着目した。私は空白への逃避、即ち極限の解放を時折強く望む。もしその様な欲が誰の心の根底にもあるのだとしたら、人間は本質的に満たされないと言える。人間は強い欲と自己を持っていながらも支え合わないと生きていけない、センチメンタルの塊なのだ。

金島 隆弘 講評

この年齢での果敢な挑戦に最初は心配していたところもありましたが、実際に大きなスケールでの作品の展開には圧倒されました。描かれた作品にも、自身の表現に対する思いが素直に表れており、表現と自分の意志とがしっかり結びついているとも感じました。この絵画を観ると、今だから表現できることを素直に描くことの尊さを感じると共に、これから歳を重ねる中で困難が立ちはだかっても、表現へ今の気持ちを大切に、取り組み続けて欲しいと思います。

tooloop

  • borderless
  • 受賞者:

    井村 一登
    アーティスト
    京都府出身
    素材:黒曜石
    協力:
    岩宿博物館、海馬・地質ガラス研究所、UNOU JUKU by AGC株式会社
    井村 一登

様々な土地の黒曜石を砕き、溶かし、混ぜ合わせ、人工的に塊を生成する。本作は、展示会場で作家が制作した石器と、そこで生じた破片を展示する。黒曜石は産地の歴史を保存した記録媒体と言える存在であり、それを合わせることは土地の記憶を共有させる行為である。石器作りという目的により、軌跡は記憶を保持したまま分散する。ミッドタウンという場の構造、そこで生まれる人々の営みからこの作品案が生まれた。

大巻 伸嗣 講評

空間の制限により、自身の作品の見せるべき所が、あまりうまく表現できなかったことは、とても残念ですが、井村さんがもともと大切にしなければならないことが、はっきりと見えた展示になったのではないでしょうか。単純な行為から生まれる痕跡とそのエネルギーの伝え方を大切にしてほしい。今後の展開を楽しみにしています。

六本木の肌理

  • 六本木の肌理
  • 受賞者:

    平野 利樹
    建築家、研究者、大学教員
    兵庫県出身
    素材:和紙
    協賛:
    株式会社アイル(発泡スチロール型枠)、アワガミファクトリー(和紙素材)
    協力:
    青木絵利香、風祭覚、金子照由、樺山菜々、北里萌音
    平野 利樹

公園のふわふわとした紫陽花、ゴツゴツした小石の舗装、ベトベトしたドーナッツ、ツルツルとしたスーパーの魚、ガチャガチャした路地裏のゴミ捨て場、ガタガタした雑居ビル、のっぺりとしたガラスの高層ビル。大小さまざまなスケールで見出された六本木という都市の肌理を、3Dスキャンによって収集し、デジタルファブリケーションと手作業によって再び物理空間上に製作することで、触覚的な都市空間体験を考察する作品です。

永山 祐子 講評

「都市の肌理」を都市に散りばめられた記号的要素を集積することによって作り上げていく、そのこと自体は想像しやすく新規性があるわけではないように感じたが、デジタル状で処理された記号情報を立体型とし、小さな紙のピースを1枚1枚貼り付けていくというアナログな行為、結果的に得体の知れない抜け殻のようなものが出現しており興味を惹かれた。視覚情報を触覚的に捉える、それは作家自身の行為によって体験された軌跡として残された抜け殻に証拠として現れていた。

審査員総評

  • 大巻 伸嗣
  • 大巻 伸嗣
    (アーティスト)

    今回は作品の完成度も高く、とても審査が困難であった。展示作品を最初に見せていただいた時、自分の事ではないのだが、少しワクワクし、作家たちが最後まで諦めず挑戦してくれたことに大変嬉しく感じた。新型コロナウイルスが蔓延してから3年弱という時がたち、その環境を受け入れながら新たな表現を紡ぎ出すことができる状況にやっとなってきたように感じる回だった。作家が抱える希望や悩みが一人の人間として、小さな試みであるが、この小さな試みが東京ミッドタウンに何かしらの影響を与えてくれるように思う。

  • 金島 隆弘
  • 金島 隆弘
    (アートプロデューサー/京都芸術大学客員教授)

    例年よりバラエティーに富んだクオリティの高い作品が揃い、コロナ禍も落ち着き、以前の状況に戻りつつあることが実感できた回でした。しかし、その間には技術の進展や社会の変化があり、それは今回の応募作品にも現れており、物質的な表現に加え、デジタルの表現の可能性を示唆するものも多い一方で、オンライン社会が急速に広がる中、作品が展示される現場での鑑賞者の視点が希薄になっている感もありました。審査員を担当して5年目ですが、この間の社会の転換点を、アートを通じて定点的に観察できた機会をいただけたことに感謝しております。

  • クワクボリョウタ
  • クワクボリョウタ
    (アーティスト/情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授/多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師)

    今年はコロナ禍を切り抜けて、それぞれの作家が自分本来の問題意識を全開にして挑むことができたように思います。また、最後までどのようにすればより良く表現できるか試行錯誤を続ける姿勢も目立ちました。このアワードがある種の対話の場として機能したのかも知れません。 AIによって良く出来たアート作品が量産されつつある今、人の創造性とは何なのかが再び問われています。その意味で、作品はそれ単独の物としてではなく、それを作った者がどのような過程において世に問うたものなのか、そのプロセスを含めて受け止め、評価することが重要なのだと感じました。

  • 永山 祐子
  • 永山 祐子
    (建築家)

    全体的にレベルが高い年で最終審査はとても見応えがあった。表現方法が様々で作家が2次審査での講評から作品を客観視した上で自分なりの答えを出した葛藤が見えた。このアワードならではの良さが出た年であったと思う。自分の感覚を信じて突き進んだもの。技術的に難しい内容を検証を重ね表現に昇華させたもの、最終的に出来上がったものはクオリティが高く美術館にあってもおかしくないと感じた。しかし、このアワードは美術館とは違う場所に飾られる。そこがさらに試された部分であると思う。審査は票が割れ、難航したが、最終的には皆が納得した形となったことも印象深かった。

  • 林 寿美
  • 林 寿美
    (インディペンデント・キュレーター/成安造形大学客員教授)

    各作家がそれぞれ、プランをもとに自分のアイデアに真摯に向き合い、表現の精度を上げてクオリティの高い作品を完成させたことに敬意を表します。また、誰もが小さく縮こまらざるをえなかったコロナ禍の収束を告げるように、どの作品にも、新しい可能性を見出そうとする意志や挑戦が感じられました。ようやく次なる時代が始まる予感がしています。

審査風景

アートコンペ総括

アートコンペでは、テーマは「応募者が自由に設定」とし、東京ミッドタウンを代表するパブリックスペースであるプラザB1を舞台に、場所性を活かしたサイトスペシフィックな作品を募集。15回目となる今回は総計263作品の応募がありました。(応募条件は39歳以下、かつ1名(組)1作品案まで。)

審査は、前年度と同様の5名の審査員のもと、「コンセプト」「場所性」「芸術性」「現実性」「独創性」を審査基準として進められました。1次審査では、書類審査で選出された作品の中から、12作品を選出。2次審査では、模型や参考作品を持ち寄った作家と審査員が一同に会し審査が行われ、最終審査に進む6作品を選出しました。2次審査通過者6組には制作補助金として100万円が支給され、2022年9月21日(水)より制作を実施。9月27日(火)の最終審査を経て、グランプリ1作品、準グランプリ2作品、優秀賞3作品、優秀賞の中から審査員特別賞1作品を選出しました。レベルの高い作品が集まり、評価が拮抗した今回は、長時間にわたる審議を経て、例年は1点のみ選出する準グランプリを2点、作家が今後活躍することへの期待を込めて審査員特別賞1点を選出する運びとなりました。自身のアイデアの本質と、それを表現する素材や技術の関係を突き詰めた作品が上位に残りました。

応募作品はインスタレーションの応募数が最も多く、次いで立体、絵画が続く形となりました。例年通り関東圏からの応募が多数を占め、全体の7割となりました。応募者の平均年齢は29.1歳となり、全体的に応募者の若年化が進んでいます。今回も感染症防止対策を引き続き講じながらも、コロナ禍以前の体制に少しずつ戻しながら、募集・審査を実施。パンデミックの発生から3年弱が経ち、バーチャルとリアルが混在する現代社会に呼応しながら自身の表現を追求する作品が多く集まりました。