デザインコンペ

2023年 結果発表

TOKYO MIDTOWN AWARD 2023デザインコンペ結果発表

デザインコンペ概要

テーマ

つながり

人と人、人と社会、日本と世界、リアルとバーチャルーー
つながり方が多様化した一方で分断も進んでいます。少し先の未来を見据えた、新しい「つながり方」の提案をお待ちしています。

審査員 篠原 ともえ、菅野 薫、中村 拓志、三澤 遥、山田 遊
グランプリ(賞金100万円)─── 1点
優秀賞(賞金 各30万円)───3点
ファイナリスト(賞金 各5万円)─── 6点
  • ※グランプリ受賞者を世界最大規模の「ミラノサローネ国際家具見本市」開催中にイタリア・ミラノへご招待します(グループの場合は2名まで。新型コロナウイルスの影響で副賞の内容が変更になる場合があります)。
  • ※2023年は審査の結果、優秀賞が4点、ファイナリストが5点に変更となりました。

応募期間 2023年6月9日(金)~7月6日(木)
応募総数 1,166点

グランプリ

動く募金箱

  • 動く募金箱
  • 受賞者:

    黒澤 杏
    学生
    神奈川県出身
    黒澤 杏

人と人を繋いでいる「バトン」と人と人を繋ぐ活動をしている「募金」をかけ合わせた「動く募金箱」。主流の募金箱は一定の場所に置かれていることが多いですが、人から人へバトンのように繋いでいくことによって様々な人の動いた想いを乗せて届けることができるのではないかと考えました。

篠原 ともえ 講評

募金というアクションが既にコミュニケーションのひとつですが、アイテムを「バトン」にすることで、手渡しするという思いそのものも感覚的に体感できたプロダクトでした。コインも入れてみたのですが、音色としても楽しめて、お子さまも喜ぶ姿が想像できます。

菅野 薫 講評

アイデアに触れたときの強度とスピードが圧倒的でした。募金といえば、箱に個別に入れるか、振り込むか。その体験に、人から人へ手渡すつながりを持ち込んだことが高い評価につながったと思います。もちろん持ち逃げのリスクなども議論されましたが、募金という行為には人の善意を信じることが似合います。なんの募金なのかメッセージを伝えるデザインを強化して商品化を実現して欲しいです。

中村 拓志 講評

通常はセキュリティを考慮して固定する募金箱。人間の性善説を信じながら、プロダクトとしては性悪説という矛盾があった。それを500円玉を直径としたバトンにして、親しい人につないでいく作品である。手渡しを介すほどに重みや重心が変わっていく実感メディアなのも面白い。どんな人でも裏切りたくない人がいるし、どんな人でも絶対的に信頼できる人がいる。それをつないでいけば、世界は変わるのではないか。その可能性に賭けてみたいと思った。

三澤 遥 講評

動く募金箱。そんな不思議なネーミングをバトンという形で見事に成立させています。相手を信じてバトンを渡す。その募金の感覚が新鮮に映りました。テーマを真っ向から捉え、「今までになかった」を鮮やかな切り口で形にできるデザインの力は眩しく、これまでの募金という行為の持つ重々しい印象を颯爽と払拭してくれるアイデアです。

山田 遊 講評

通常は場に固定されていたり、または募金を募る側の人々が常に携えている募金箱を、バトンの形状にすることで人から人へと渡して募金を繋いでいく行為へと変換する提案は、そのことによって生じるリスクに対処したり配慮することよりも、この提案が、そもそも募金という善意ある行動と共に、募金箱を渡した人の持つ善性を信じて、バトンを繋いでいく、というシンプルで力強いメッセージ性と、何より人間に対する希望を感じさせてくれるコンセプトを高く評価した。

優秀賞

リバースけん玉

  • リバースけん玉
  • 受賞者:

    都 淳朗(右)
    プロダクトデザイナー
    徳島県出身
    太田 壮(左)
    UIデザイナー
    千葉県出身
    都淳朗、太田壮

リバースけん玉は従来の「球と皿」「剣と穴」それぞれの役割を入れ替えたけん玉です。シンプルな「役割の逆転」によって、既存の遊びを拡張しながら新しい楽しみ方とコミュニケーションが生まれます。この逆転の体験は、身の回りの既存の役割に目を向け、それらのつながりを考え直すきっかけになるでしょう。

篠原 ともえ 講評

「やってみたい」と興味をそそり手に取ってみたくなるフォルムで、木のクラフト感もよく、プレゼンの前から注目を集めていました。実際使ってみると、難易度も高かったのですが、また挑戦したくなります。新しいのに、懐かしいデザイン。検証結果の成果も発揮され、完成度の高さが光る逸品でした。

菅野 薫 講評

小学生の時に、マクドナルドのおまけのけん玉に夢中になったことを思い出します。歴史のある、時代によらない普遍的な遊びに意外性や新しい発見を持ち込むデザイン。遊びとして成立させるためには丁寧な工夫と検証が必要ですが、誰でも一目見ただけでわかるシンプルで太いアイデア。パッとみて、みんな一度はやってみたくなると思います。

中村 拓志 講評

価値観の多様化する社会で、ゲームやスポーツには意味や言葉を解さずに人々を即興的につなぐ力がある。ルールの理解が参加障壁となる新しいゲームではなく、けん玉の槍と球の形式を反転させるだけで異化効果を作り、誰もが参加したいという欲求を作り出した。提案の大半を元々のけん玉の遺産に依存しているが、二つの物体が紐で「つながる」少し変わったけん玉に熱狂する審査会場を見て、「つながりは既にある、モノの見方を変えるだけで私たちはそれを豊かにできる」という作者のエスプリを評価した。

三澤 遥 講評

見た目はけん玉だけど、よくみると知らないけん玉。けん玉をやったことがある人こそ、思わず遊んでみたくなる不思議な力があります。ただ凹凸の部位を交換しただけなのに、実際に触れて遊んでみるとまるで違う遊びをしているような違和感があり、この新鮮な驚きや複雑さを誰かと共有したくなる魅力があります。遊びの発明が光ります。

山田 遊 講評

けん玉の皿や玉、剣と穴の形状をどれも反転することによって、けん玉で遊ぶ動作は基本的に同じでも、微妙なズレが生まれたり、技の難易度が全く変わったり、さらには新しい技が生まれたりすることなどがもたらされている点が非常に興味深かった。フォルムも従来のけん玉の姿を保ちつつ、見る者に新鮮な感覚を与えてくれる。

記すビーカー

  • 記すビーカー
  • 受賞者:

    大原 衣吹
    学生
    愛知県出身
    大原 衣吹

オリジナルの目盛りをメモできるビーカーです。六角柱型のビーカーの側面にフロスト加工が施されており、マジックペンで書き込むことができます。時に感覚に頼る調味料の配合を記すことで、親子の関係を、家庭の味を、もう会えないあの人の味を思い出しつないでいきます。

篠原 ともえ 講評

御祖母様の味を残したいという思いから着想を得たとのこと。私もこのアイテムを欲しいと思いました。味だけではなく、家族に記してもらった文字そのものも含め宝物になる様な作品。文字を記す側にも幸せな時間をくれそうです。

菅野 薫 講評

家族で、大事な人たちで、受け継がれるレシピをそのまま書き込めるビーカー。シンプルにつながりといったときに、一番情緒的で一番機能的なアイデアでした。ビーカーにとどまらない商品にアイデアを広げられそうで、ワクワクしたし、心温まりました。

中村 拓志 講評

調味料の量や手順を記入可能な軽量カップ。メモリが刻まれただけの計量カップが、家の味、大切な人の味をつないでいく存在になる。フロスト加工の面に書いた油性マジックの字が、洗いを繰り返しても消えないのであれば、即製品化できるアイデアである。カップを逆錐形にすれば大さじ小さじレベルの計測も可能だろう。このシンプルで力強い手法は、審査会場で様々なアイデアを召喚したように、あらゆるジャンルのプロダクトの「つながり力」向上に寄与するだろう。

三澤 遥 講評

提案時のイメージ写真が印象に残っています。それは、家族から届いた荷物の中に地元の食材やお菓子と一緒にこの「記すビーカー」が入っている写真です。この画の持つ説得力は強く、言葉がなくても一気にそのモノの愛おしさが伝わってきました。ただ、大切な人の記したレシピや分量だからこそ、簡単に書き換えられるものではなく、ずっと消えないという捉え方もあったかもしれません。

山田 遊 講評

円筒形が多いビーカーを六角形にすることで本体に複数の平面が生まれ、その面にレシピのメモやメッセージなどをペンで書き込むことができる。結果として、六角形の形状は道具としても指の引っ掛かりが向上することで持ち易く、使い易い。デザインとして良くまとまっており、商品としての実現性や可能性も期待できる。

タイムシフトタイマー

  • タイムシフトタイマー
  • 受賞者:

    楊 子秋
    学生
    中国陜西省出身
    楊 子秋

「自分が過ごしてきた時間の中で、世界で何が起きてきたのか」それを出発点としたデザイン。タイムシフトタイマーは、計測器によって計測された客観的な時間の長さを具体的な出来事として表示し、私たちの現在の生活を歴史的な出来事や自然現象、個人的な記憶と結びつけ、世界と自分自身に対する理解を深める。

篠原 ともえ 講評

つながりというテーマから「時間」を捉えたアイデアが素晴らしく、体験が文字になることで、時間の価値観さえも変わる面白さ。インスタレーション作品の様で、楽しめました。言葉のチョイスもユーモアがあり、引き込まれました。

菅野 薫 講評

何気ない日常の中に意外な世界との共通点を見つけることが出来るツール。つながりというお題を与えられたときにこのようなアプローチから着想出来ることの豊かさを尊敬します。時間と事実のネタは世界中の人が考えてシェア出来るとよりつながりますね。商品化が楽しみです。

中村 拓志 講評

使用者が設定した時間だけでなく、それと同じ経過時間だった別の事象を画面に表示するタイマー。それは歴史上の出来事から、個人的な記憶、自然現象に至るまで、自分と世界をつなぎ、共感を紡いでいく。今ある製品にたった一つのボタンを加えるだけで、無味乾燥な数字の羅列に情感が立ち上がる。あらゆるものを数値化する社会の中で、数値から感情を起動させて、共感を紡ぐ手法は大変鮮やかで、個人的には最も評価した。

三澤 遥 講評

赤色のボタンを押すと普段の生活が世界につながる。タイマーに刻まれた数字の記憶が不意に目の前に表示され、自分自身の些細な日常と重なることで、予期せぬ「知」との出会いにドキドキワクワクできそうです。ただし、細部の収まりや形状の美しさにはまだ課題が残っており、もう少しプロトタイプの精度を高めてもらえると発想の面白さがより際立つ提案になったように思います。

山田 遊 講評

定量的な単位である時間の長さという概念に、定性的な情報を加えることで、普段、意識の中では数値として、もしくは、ほぼ無意識に近い状態で何気なく過ぎていくことを感じている時間に対して、ボタンを1つ加えることで、このタイマーを使う人々に必ずや新たな気付きや体感を与えてくれるであろうコンセプトを評価した。

みんなの味噌汁.com

  • みんなの味噌汁.com
  • 受賞者:

    スイミー
    栗原 渉(左)
    サービスデザイナー
    宮城県出身
    髙橋 恵佑(右)
    デザイナー
    宮城県出身
    スイミー

実家の味噌汁をフリーズドライにして購入できるようにするオンラインショップサービス。味噌や具など、実家仕様に自由にカスタマイズし発注をかけると、数日後には購入できるようになります。味噌汁は、家族と家族をつなぐ大事なツールです。いつどこにいても、家族をつないであげられる、そんなサービスです。利用者が増えれば、次第に日本全国各地・各家の実家の味噌汁の味が楽しめるようにもなります。

篠原 ともえ 講評

実体験と共に展開したプレゼンテーションは引き込まれるものがあり、とても印象に残りました、パッケージデザインもクオリティーが高かったです。「味」をテーマにした作品が多く残る中で強い印象と情熱を感じました。東京ミッドタウンとのコラボで何かしらの形にして欲しい! 魅力ある作品だったので、同じ作家の別の作品も見てみたいです。応援しています。

菅野 薫 講評

家族の大事な味をテクノロジーでアーカイブ化して、いつでも誰でも手に入れることが出来る夢のあるアイデア。インドの数えきれないカレー味があるように、星の数ほどある味噌汁をシェア可能なライブラリする挑戦に心踊りました。最初にアイデアをみたときはどこまで実現可能性のアイデアがあるのだろうか、と心配もあったのですが、2次審査のプレゼンでは可能な限り実現の方法を検討されていて、そこも素晴らしいなと感じました。

中村 拓志 講評

我が家の味噌汁をつないでいくための、フリーズドライ商品。味噌汁は家庭の数ほどのレシピを持つメディアであり、個人の記憶が深く詰まっている。本物の味をフリーズドライで再現可能かという疑問はあるが、今まで各家庭で眠っていたこの豊穣を、比較・再現可能な商品として世界に開いていくことは大きな可能性がある。パッケージも含めて最も洗練されたデザインの作品であったが、家庭内のつながりの先の、他者とのつながりにまで波及するアイデアを見たかった。

三澤 遥 講評

家族の味の象徴、味噌汁。それぞれの家庭の味をインスタントで忠実に再現することは困難な気がしましたが、味を記録して収集するという発想自体がとてもユニークです。提案を拝見しながら、亡き祖父が作ってくれた味噌汁が、私にとってはもう食すことのできない絶滅料理であることに気づいてハッとしました。10年後、100年後まで味をつないでいく仕組みが構築できたら確かに豊かかもしれません。

山田 遊 講評

日本の家庭の味の象徴とも言える味噌汁のレシピを、出汁や味噌、具材などを選ぶことで、フリーズドライの味噌汁にカスタムオーダーできるサービスの提案で、製造背景など実現性も含め非常に良くプランが練られていた。こうした家庭の味や、また地域で異なるレシピのアーカイブを残していくことは価値があるように思える。

ファイナリスト

傘育て

  • 傘育て
  • 入選者:

    A STUDIO
    陳 陽(右)
    学生
    中国広東省出身
    呂 木知(左)
    デザイナー
    中国江蘇省出身
    蒋 方(中央)
    統合デザイナー
    中国甘粛省出身
    A STUDIO

雨水や露の滋養を受けた朽ち木にはキノコや苔が芽生えます。そうですね、雨水は植物を潤すべきです。私は傘をさして世界の雨を家に持ち帰り、それを私の植物に与えて滋養を与えます。 苔の小さくて柔らかい枝葉が徐々に広がり、美しい翠緑の景色を作り出します。 木の割れ目はまるで小さな苔の庭園に変わり、生命力に満ちています。木の割れ目に生い茂る苔の景色を眺めると、雨の日の曇りが一掃されたかのようです。

山田 遊 講評

森の中で転がっている丸太を傘立てに見立て、雨の中で傘を差す行為を、雨を家に持ち帰るという行為に読み換えることで、木から芽が出たり、キノコが生えたり、苔が育ったり、朽ちていったりする変化を、森の中での情景に見立て、その傘立てを使用する人々に対し、自然への意識を喚起させる詩的な提案は興味深かった。

シェアフード

  • シェアフード
  • 入選者:

    蘭 雲傑
    デザイナー
    中国四川省出身
    蘭 雲傑

小さい頃に友だちとキャンディーを分け合った幸せな記憶が誰にでもあるのではないでしょうか。食べ物を分かち合うことで、味覚を通じて友だちとの友情が築かれ、人と人との距離が縮まります。シェアすることはシンプルな行為ですが、味覚という共通の感覚を通じて友だちとの距離が縮まり、食べ物をきっかけとして話題が広がり、新たに友情が育まれるのではないでしょうか。 「Sharing Food」にはクッキー、チョコレート、フルーツキャンディーの3種類があります。シェアする体験は、一人で食べるよりもはるかに幸せなことです。

中村 拓志 講評

8の字型のクッキー。袋から摘まんで出して相手に差し出し、触ってない反対側を相手がつまむ。お互いに力やスピード、呼吸を合わせないと上手に割れないのが良い。噛み砕く音、舌の味蕾センサーの反応と神経伝達物質の脳スパークに至るまで、ここまで二人がシンクロできるなら、それはとても強いつながりだ。シンプルな提案だからこそ、汎用性を持っている。どんなに綺麗に割っても、パピコのように完全に半々にならない部分にも、コミュニケーションの契機があって良いと思った。

あやとり人間

  • あやとり人間
  • 入選者:

    Nyokki
    三谷 悠(左)
    デザイナー
    東京都出身
    八幡 佑希(中央)
    デザイナー
    千葉県出身
    柿木 大輔(右)
    デザイナー、プロダクトマネージャー
    福井県出身
    Nyokki

    ©Daisuke Kitazaki

ようやく会えた家族や親しい友人と同じ空間を過ごす時、おしゃべりしたい時もある一方で、コミュニケーションは言語だけではない。子どもの頃のように一緒に遊び、おかしくて笑ってしまう時間は楽しい。本提案は親しい人と一緒に挑む巨大なあやとり。ぐっと離れたり近づいたり、リアルな距離感がコロコロ変わりその身体感覚が新鮮。少し先の未来に例えば4世代を超えて、慣れない動きに爆笑しながら、「つながる」時間を提供する。

三澤 遥 講評

身体スケールでの遊びは、他の提案にはない伸びやかさや広がりがあって目を引きました。指示カードが読み上げられていくほどに、人と人の距離が近くなったり遠くなったりするゲーム感覚も取り入れられ、手を使うあやとりとはまた異なる達成感が味わえたり、協力し合えたりする姿が印象的でした。ただ、遊びの肝となるカードの指示が複雑で難しそうで、ルールが明快でないような印象も感じてしまいました。

成長フォント

  • 成長フォント
  • 入選者:

    髙野 彩乃
    アートディレクター
    神奈川県出身
    髙野 彩乃

子どもの頃の拙い文字は、成長とともにどんどん変化してしまう。残すべきものは写真だけじゃない。
子どもの手書き文字を、成長と共にフォントで残しておくサービス。

篠原 ともえ 講評

その都度消えてしまう「文字」を個々の魅力として、今だからこその宝物と捉え、形に残すことでつながりを生むというアイデアは作家自身の原体験も紡がれた素敵な作品でした。
資料も丁寧に制作されており、これからも素敵な作品を生み出してくれるのではないかと期待が膨らみます。
一番初めから、多くの作品の中でも目に留まり光っていました。愛情深い作品をこれからもつくってください。プレゼンテーション感動しました。

充電端会議

  • 充電端会議
  • 入選者:

    8000000Studio
    馬鳥 智貴(左)
    学生
    富山県出身
    陳 宇澤(右)
    学生
    中国福建省出身
    8000000Studio

充電という日常的な行為をデザインすることで、人々のつながり方が変わるのではないか。机の上のたこ足配線を眺めていて、そう思った。
置くだけで充電できる丘の他にも、物を置ける細長い谷、大きな盆地、小さな山々……
このシートは、サッと広げることでどこにでも微地形を生み、物たちと人々が集まるきっかけとなる。
ひとときのデジタルデトックス空間で、機器だけでなく私たちの和やかな時間も充電しよう。

菅野 薫 講評

最近会議に参加するとみんなすぐ電源とwifiを探して、パソコンを開いて画面に見入ってしまうのが寂しいなと感じていました。リアルで人と会う時くらいデバイスを閉じて会話したいなと思ったときに、スマートフォンもみんなで集まって充電休憩というアイデアが素敵だなと思っていました。2次審査のプレゼンの段階で、充電というシンプルなアイデアから散漫になってしまったのがちょっと残念!

審査員総評

  • 篠原 ともえ
  • 篠原 ともえ
    (デザイナー/アーティスト)

    TOKYO MIDTOWN AWARDは、デザインにジャンルレスにアプローチできることが大きな特徴だと思います。今回ファイナリストに残らなかった方も、「実現したらきっと素晴らしいんだろうな」というアイデアもたくさんあったので、デザイナーの皆さんには引き続きチャレンジしていただきたいと思います。 審査を通して感じたのは、想像を巡らせながら触れる一種のアート体験のような特別な感覚になれました。誰を大切に思うのか、どんな人と一緒にいたいのかという、自分の中の「つながり」について気持ちを湧き起こすような時間を過ごせました。

  • 菅野 薫
  • 菅野 薫
    (クリエーティブディレクター/クリエーティブテクノロジスト)

    世界中から1,166件というアイデアが希望を持って提出されている事実にこのアワードの意義や価値を感じました。 今回のテーマの「つながり」は、人間の根源的に関わる大きく広い意味を持った概念なので、そこをどう評価するかが最大の論点。 ジャンルの異なる素晴らしい審査員が集まったので、審査のプロセスが非常にクリエイティブなものでした。それぞれの審査員によって提示される視点やアイデアのモチーフの発展させ方がお互いを刺激して議論が有意義なものになりました。 ファイナリスト以上の作品は、テーマの捉え方の視点の意外性など全て違う面白さを持っていて、全て素晴らしいもの。自信持っていただいて良いと思っています。

  • 中村 拓志
  • 中村 拓志
    (建築家)

    大量生産大量消費の社会は商品の広範な普及を目指すため、かつてあったシェアを否定する。その結果、人を地域や会社、家族といった共同体から切り離し、個人主義促進の一翼を担った。今回のテーマ「つながり」は、あらゆるプロダクトやサービスが個人主義を基盤とした商品開発のベクトルを逆回転させて、連帯のための経済を目指す意義を持っていた。
    最終的には最もダイレクトな方法である、プレーヤーが複数いることで成立する商品の中でグランプリが選ばれた。
    「動く募金箱」や「シェアフード」には強度があった。
    全体的にゲームや身体、味覚、記憶などの非言語的な関わりの中に、つながりを見い出す作品が多かった。「みんなの味噌汁.com」や「記すビーカー」「成長フォント」など、曖昧で個人的なものを定量化して再現可能にする案である。その一方で、数字といった客観的なものを、定量化できない感情に変換する「タイムシフトタイマー」は、大変知的でラディカルであった。あらゆるものがデジタル化されて無味乾燥になる現代を受け入れながら、大量生産型の商品にボタンを一つ加えるだけで、私たちと世界をつなぎ、共感を紡ごうとする姿勢に感銘を受けた。

  • 三澤 遥
  • 三澤 遥
    (デザイナー)

    思いついた瞬間を取りこぼさずに、通り過ぎずに、ちゃんと形として受け止めた人だけが伝えられるものがあります。それをひしひしと感じることができた審査でした。受賞者の皆さんに共通していたのは、「つながり」というテーマに対して意表をつく結びつきを示してくれたこと、そしてそれらはどれも、些細な気づきの上に成り立っているということです。押すだけ。替えるだけ。動くだけ。受賞作はどれも潔くシンプルな回答でした。「え、これだけ・・?」くらいの1アイデアこそが、世界をがらりと変えてくれるメッセージを秘めているのかもしれません。

  • 山田 遊
  • 山田 遊
    (バイヤー)

    応募作品のジャンルが本当に幅広く、さまざまな解釈ができるテーマの中で、これだけ多種多様なデザインが応募されてくること自体に、また、それらのデザインが持つアイデアの多様性に改めて驚きました。ファイナリストに選ばれた作品は、テーマとの合致も含め、コンセプト・実現可能性・商業的な可能性などで評価は集まりましたが、最終的にグランプリ・優秀賞に選ばれた作品は、これまでの概念・行動を変える可能性がある提案が残った印象で、コンペの今後の方向性を指し示すような結果になったと感じています。

審査風景

デザインコンペ総括

16回目となるデザインコンペは、従来通りの条件(応募時点で39歳以下)、審査基準のもと募集を行い、ファッション、デザイン、建築、広告など各分野からの5名の新審査員に就任いただき、総計1,166点の作品が集まりました。

「つながり」というテーマのもと、人と人、人と社会、日本と世界、リアルとバーチャル――など、テーマの投げかけに表面的に答えるのではなく、デザイナー・クリエイターとしての「意志」が作品に色濃く反映されているアイデアが多く集まりました。直接的なつながり方を変えるものや、概念や気持ちのつながりを変化・強調する提案まで幅広い作品が集まりました。ジャンル別では、プロダクト領域が最も多く、インテリア・サービス・システムのジャンルは例年よりも増加した結果となりました。

「デザイン力」「提案力」「テーマの理解力」「受け手の意識」「実現化(含む商品化)につながる」という5つの審査基準のもと、1次審査(書類審査)で10点を選出しました。2次審査ではプレゼンテーション・審査員との質疑応答を行いグランプリ1点、優秀賞4点、ファイナリスト5点を決定いたしました。審査過程で議論をつくしたものの「僅差で優劣をつけられない」という議論の結果を受け、優秀賞を規定の3点から4点へと1点増やす結果となりました。意匠が優れていることはもちろん、何か小さなきっかけで、概念や行動を大きく変える可能性のある作品が上位に残った印象です。

2次審査では、4年ぶりに会場でプレゼンテーションを行っていただき、対面でのプレゼンテーション・質疑応答・審査となりました。またファイナリスト10組のうち、留学生含め4組6名が日本以外の国籍の参加者であるという結果となり、審査員および主催者一同、本アワードの世界への広がりを強く感じました。

商品化・実現化への期待が大きく膨らむ、実用的なデザインから詩的な提案まで、幅広い計10作品を発表できることを喜ばしく思います。これまでと同様、今回の受賞・入選作については商品化・実現化を目指していきます。

応募をいただいたすべての皆さまに感謝の意を表します。ありがとうございました。