アートコンペ

2020年 結果発表

TOKYO MIDTOWN AWARD 2020アートコンペ結果発表

アートコンペ概要

テーマ

応募者が自由に設定

東京ミッドタウンという場所を活かしたサイトスペシフィックな作品を募集します。
テーマを自由に設定し、都市のまん中から世の中に、そして、世界に向けて発信したいメッセージをアートで表現してください。

審査員 大巻 伸嗣、金島 隆弘、川上 典李子、クワクボリョウタ、鈴木 康広
グランプリ(賞金100万円)─── 1点
準グランプリ(賞金50万円) ─── 1点
優秀賞(賞金 各10万円)─── 4点
  • ※グランプリ受賞者を、University of Hawaiʻiのアートプログラムに招聘します。
応募期間 2020年5月11日(月)~6月1日(月)
応募総数 279点

グランプリ

つながり

  • つながり
  • 受賞者:

    船越 菫
    アーティスト
    大阪府出身
    素材:キャンバスに油彩
    船越 菫

人の肌が大地の起伏に相似する瞬間があるように、光の陰影が生むつながりは自然における事物の関係性そのものをもあらわすようだ。日常の自然の中の光を色彩へと解体し、感情を伴う記憶へと変容させる。東京ミッドタウンという、自然と都市が一つに融合した空間とつながり合うこの作品から、近年失われつつある人と人/人と自然の美しい「つながり」、自身と外界との本来的な「つながり」を思い出してほしい。

大巻 伸嗣 講評

この場所を通るたびに、ここに作品があるなと確認するのですが、この作品を初めて見たとき、何かしら違和感を感じながら通り、何が違和感なのかをなかなか見抜けなかったところがすごく面白かったです。通路の中にある壁が向こう側に引っ張られるような、浸透していくような、光が溶けていくようなそういった状況を、船越さんが作家として作り出して、そういう世界観が経験できる作品になっています。そういったところが実現できたことをすごく評価しています。今後の作家活動も期待していますし、いろんな場を経験して変化していくことを楽しみにしています。

金島 隆弘 講評

作品を見たときに、自分が想像していた以上に驚きがありました。絵画としてTOKYO MIDTOWN AWARDでグランプリを取るというのは、もしかしたら初めてかもしれませんが、絵画だけれども、それを超えている作品が立ち上がっていて、船越さんに実際に話を聞くと、緻密に丁寧に準備していて、精度の高い作品だと感じました。

川上 典李子 講評

人の肌と自然、大地といった様々なつながりを描いた画面の前に立っていると、画面そのものが呼吸しているかのようにも感じました。身近な世界と雄大な世界とが連なり、その一部が反転するかのような印象も受け、描かれた光のなかにひき込まれる思いにもなります。通路の既存壁も作品、との発想で、壁とひとつながりになるように描かれた世界は、まさにこの場でないと生まれえないものであり、独自の陰影は私たちを包む自然界の奥深さと、人の目には見えないながらも存在する多様な生命をも想像させます。スケールが大きく、深い魅力を備えた作品です。描ききった船越さんのエネルギーを評価するとともに、これからの活躍を期待しています。

クワクボリョウタ 講評

現場で作品の前を通りかかると、一瞬気づかないくらいあの場に馴染んでいて、ふと気づくと非常に緻密な作品がそこに置いてあるという二重の体験をしました。いくつものレイヤーで塗り重ねられた色面は眺めていると色々なものに見えて来ます。それだけ長い時間足を留めて見ていられる密度があり、それが人が行き交う通路にまるで壁紙のように設置されていることに面白みがあります。オンライン偏重の昨今、時空間の豊かさを思い出させてくれる作品です。

鈴木 康広 講評

船越さんの作品は、一見すると柔らかなタッチにもかかわらずとてもパワフルで、東京ミッドタウンの通路を異質な空間に変容させていました。どこからが作品なのか、わからなくなるような驚きを身体で感じることができました。絵画として視覚的な追求でありながらも、もともとの壁面と連続する木漏れ日のパターンから発展したモチーフに手が多重にかさねられているところなど、予想を超えて触覚に訴える作品になっていました。見るたびに移り変わっていくような、定着されているようで変化していくような感触もあり、これまで同じ壁面でさまざまな作品を見てきましたが、僕自身が「絵画」に対して新鮮な感覚を持つことができました。

準グランプリ

郊外観光 ~Time Capsule Media 3

  • 郊外観光 ~Time Capsule Media 3
  • 受賞者:

    川田 知志
    美術作家
    大阪府出身
    素材:トタン板、麻布、
    油絵具、釘、タッカー、
    合成樹脂塗料、
    ドブメッキフェンス、
    メガネ石、木材
    協力:一般社団法人HAPS
    川田 知志

建築と都市の関わりや身近な社会、生活環境に注目し、公共空間を利用した壁画やインスタレーションを制作しています。今回、郊外の景色を都心に持ち込みます。経年劣化により偶然剥がれたトタン壁面の裏側に、過去でもあり同時に未来でもあるどこかの景色を覗かせ、現在都心で暮らす人々の記憶する地場へ接続します。

大巻 伸嗣 講評

おめでとうございます。僕は、川田さんは作家性というのをすごく持っていると感じ、作品自体もすごく期待しています。今回、私は作品がどこで終わっていくか、どこまでを作品と考えるかという問題を指摘していました。作品の持っているエネルギーを、今後はもう少し拡げて萎縮しないでやってもらいたいです。自分が作家としてやるべきことをしっかり認識している作家だと理解していますので、今回の作品を、多くのお客様に見ていただくこと、また場という点から、改めて考えていただけたらと思います。

金島 隆弘 講評

川田さんの作品はこれまでにも拝見していたんですけれども、自分が思っている以上に非常に丁寧に緻密に計画されて作られた作品だと感じました。今回、関西から東京に来て、ミッドタウンで発表するということで、何かノイズのようなものが出てくることを期待していた部分もありました。作品から、もう少し収まらない何かみたいなものが出てくると面白いと思いました。

川上 典李子 講評

「郊外観光」をテーマとする川田さんの3作品目で、東京郊外を訪ねたうえでの考察が重ねられています。最終審査時に語っていた「移動するなかで、自分の身体感覚の変化がある」との言葉は興味深いものでした。剥がれた壁面から覗く異なる時間の風景が、観る人に新たな情景をもたらすことと思います。ただ今回は、展示環境のなかで従来とは異なる苦戦をされていたのではないかとの印象を受けました。拠点とする関西を離れての「郊外観光」でもあるだけに、枠から自由となった表現も観てみたいところです。郊外リサーチに関して「関西との違いをわずかながらじわじわ感じ始めている」とも述べていましたが、そのうえでの都市の「奥」の表現もいつか目にできることを願っています。

クワクボリョウタ 講評

作者が探し当てて描いた一つの風景がその部分部分を垣間見せることで断片化し、それによって風景を構成する街の要素同士の無関係性を露わにしているように見えます。壊れて穴が空き錆びたトタンのフェンス、そしてそこから見えるその向こうの雑多な眺め、そのような風景は実は誰もが眼にしてきたものでしょう。それがこの洗練された空間に置かれていることで、都市の表と裏の表情を対比して示しています。見る人の記憶により様々な印象をもたらすことでしょう。

鈴木 康広 講評

川田さんは、作品制作にあたって、大阪のナンバーをつけた車に乗って東京に訪れたそうですが、「車の中が関西のままである」という特殊な視点やその感覚から街を捉えようとしていることが印象深く思いました。日本列島の県と県の境界を強く意識するようになったコロナ禍の中で、「車の中」というプライベートであり、どこでもない空間を運ぶ興味深い作品でした。今回、展示空間の中に行儀よく収まっていたのがすこし気になっていますが、既存のルールを絶妙に剥がしていく作家だと思っており、そういったルール自体を疑うような、境界を捉え直していく作品を今後も期待したいと思います。

優秀賞

Floating Surface

  • Floating Surface
  • 受賞者:

    坂本 洋一
    アーティスト/エンジニア
    東京都出身
    素材:モーター、デバイス、プーリ、ゴム、
    エラストマー、テグス
    協力:三井化学株式会社
    坂本 洋一

この作品は六本木のタイムラインをテーマとしています。太古の地球温暖期では東京の中心部まで海岸線が迫っていて六本木周辺は海岸や岬であった可能性があり、この場所も海面と同じ高さだったのかもしれません。モーターによって制御された波打つ矩形は太古にあったであろう水面を切りとっています。太古の東京に広がる海を想像させ小さな気づきやゆったりとした時間の流れを作ります。

鈴木 康広 講評

坂本さんの作品は、審査員の中でも意見が分かれました。作家のビジョンをしっかり提示すべきであるという意見もある中、僕は、状況の中でプログラミングを続けソフトを作り上げていく姿勢も評価したいと思いました。「観る人を見て作品を制作する」というのは、デザインの領域ではふつうに行われ、アートの領域では作家の提示するビジョンこそが、多様な文脈で時間を超えて訴求力を持ちうる。こうした軸の違いのようなことを、観客を巻き込みながら議論する場が生まれたらよいのではないかとも感じました。場所と出会い、そこで観る人の考えや想像を受け止める器のような作品になっていくことを期待したいと思います。

拠り所の行方

  • 拠り所の行方
  • 受賞者:

    佐野 魁
    美術作家
    静岡県出身
    素材:コンクリート、木炭、
    木材、塗料
    佐野 魁

まるで宇宙空間にいるかのように家やビルが中に浮かんでいる。木炭により描かれたこれらのイメージは、フィクションであると同時にひび割れたコンクリートから現実としてのリアリティーが感じられ、観る者は現実と空想の間を行き来する。強固な素材の「コンクリート」と安息の場所である「家」という私たちの生活の中で安全性が確保されたものに、強い揺さぶりをかけることで明日にも変わるかもしれない都市の不安定さを表現した。

金島 隆弘 講評

元々壁に掛ける作品で提案していたものが、実際はかなりインスタレーション的にやらないといけないというところがありましたが、逆に、あの空間のなかでどう見えるか、どう活かすかということを考えられるすごく良いチャンスだったのではないかと思っていました。地面から地続きで、その空間のなかで作品が立ち上がるとか、周りにはいろいろな要素がありますが、場の要素と作品との関係があると面白かったと思います。あとは、画面の中の家とかをどう配置するか、なんとなく画面の中でバランスをとるということではなくて、選んでいる家や、家の距離感などが、画面のなかの配置やスケールに反映されると、より見応えのある作品になるんじゃないかなと思います。

Where Are We Going?

  • Where Are We Going?
  • 受賞者:

    山本 千愛
    アーティスト
    群馬県出身
    素材:12フィートの木材、
    ビデオ、アクリルプリント、メモ
    山本 千愛

12フィートの木材を都内で購入し、それを持って東京都港区を歩く。木材は東京のアスファルトによって削られ、両端が尖っていく。木材が削れた分、歩くに関する私の経験値が蓄積されていく。目にはみることができない。あらゆる公共交通機関が一堂に介する東京で、この木材を手に持って移動したいとき、歩くことしか選択できない。果たして本当に選べないのだろうか。選べたとして、私たちはどこへ向かおうとしているのだろう。

川上 典李子 講評

いつも通りの移動がままならない状況にある現在ですが、山本さんの作品は、一貫してひとり歩くことから始まります。長い木材を手にした12日間の移動は合計で約130㎞に及んだとのこと、先端が削れた木材がその時間を伝えます。編集を避けてあえて数時間とされた映像は私たちが同じシーンを再度見たいと願っても難しいものですが、偶然の出会いを重ねつつ歩き続けていく山本さんならではの表現に感じました。最終審査時、移動中に感じた多様な「手あと」に関して幾度か口にされていたのも興味深い点です。人との出会いはもちろんのこと、それだけでなく自身の心や身体がとらえたものに深く向き合う時間も、今後大きな意味を備えていくのではと思います。今回得たものを大切に、想いを作品として伝えていく取り組みを続けてもらえることに期待しています。

微かにつながる

  • 微かにつながる
  • 受賞者:

    和田 裕美子
    アーティスト
    神奈川県出身
    素材:髪の毛
    和田 裕美子

    ©photograph:Takeru KORODA

きっと髪の毛には、その人の記憶や想いがつまっている。たくさんの人の髪の毛を編んでひとつにつなげることで、知らない誰かとつながるとともに、いつかは忘れ去られてしまうような様々な想いをつなぎとめておきたい。お互いの存在に目を向けずに忙しく行き交うなかで、一瞬でも他人の存在を感じてもらえたらと思う。

クワクボリョウタ 講評

髪の毛の成長と、それを編み込んでいく過程という二つの時間軸に、往来が起こす風に揺れるもう一つの時間が交わって作品がそこに成立しています。この作品は3人の女性を表しているということですが、その三者の関係性をどのようにとらえたら良いのでしょうか。髪の毛という素材が持つ固有性と、それらが一つにまとめられていくことの意味についてどのように考えているかがこの作品の鍵になるように思われます。

審査員総評

  • 大巻 伸嗣
  • 大巻 伸嗣
    (アーティスト)

    コロナによって世の中がどんどん萎縮していく中で、アートや美術はどうやって価値観のボーダーラインを壊し、その価値観自体を変えていけるかがすごく問われたと思います。今回、オンラインでの審査となり、皆さん自身とダイレクトに関わり合う場がなかったことは少し残念でしたが、実際に作品を見たなかで、最初に思った印象は、良くも悪くも、よく完成されているなということでした。作品というのは、衝動に駆られて行動に移しリサーチや制作を進め、最終的に美術作品として、ダイレクトに伝わっていくにはかなり時間がかかると思っています。このコロナ禍以降、私たちが人間である証明として作品を作り続けるということを、どのように新たな方法や、新たな価値観の中で示して行けるかということを、この東京ミッドタウンという場で、もう一度、皆さんと考えられればいいなと思っています。

  • 金島 隆弘
  • 金島 隆弘
    (アートプロデューサー/芸術学研究員)

    最終審査に残った人は、とても特殊な環境の中で準備や制作設置までされたということで、大変だった一方ですごく良い経験にもなったのかなと思います。今年の作品は全体的に「収まり感」があり、はみ出したりノイズが出たりする部分をあまり感じられないものが多いと感じました。それはもしかするとオンライン化の影響があったのかもしれません。また、今までは東京の方が多かったと思いますが、今年は、京都で活動している方々が受賞しています。今年たまたまなのかもしれませんが、もしかしたら、コロナ禍によって、地域や距離という概念にある種の公平性が出て来ているのかなということも感じました。

  • 川上 典李子
  • 川上 典李子
    (ジャーナリスト/21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクター)

    世界中がかつてなかった状況にあるなかで、コンペに応募してくれた皆さんはいま何を感じとっているのか、作品の完成を心待ちにしていました。人と人とのつながりを始め、私たちと自然環境との関係性、社会、都市との関わりに目を向けることの重要性など、ファイナリスト6名が個々に取り組み続ける題材とは、現在の状況においてはなおのこと、忘れてならない大事なものであるのだということが改めて示されています。各者の問題意識のうえで異なる煌めきを感じさせる作品を前に、最終審査も再び厳しい審査となりました。全体として作品が行儀よくまとまっている印象を受けるのが若干気になった点ではありましたが、作品の一つひとつに向き合っているとその奥底からじわりと湧き出すような力が伝わってきて、6名の確かな存在と制作に挑む姿勢を感じずにはいられません。そのエネルギーを、東京ミッドタウンを訪れる多くの方々に感じとっていただけることと思います。

  • クワクボリョウタ
  • クワクボリョウタ
    (アーティスト/情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 准教授/多摩美術大学 情報デザイン学科非常勤講師)

    まず、今回はコロナ禍の影響ということで非常に制作しづらい環境であったにもかかわらず、みなさんこれだけの作品を作られて完成することができたことを評価しています。蓋を開けてみれば、例年と作品の雰囲気が極端に変わったということはあまり無いようにも感じました。しかし、制作の現場ではさまざまな制約があったと聞きましたので、それぞれ人知れぬ苦労をされたことと思います。私たちの活動が制限されることは、代替手段としてのオンラインではできないことに気づき、いま・ここで経験することの価値を再発見する機会になっていると思います。それは今まで漠然と了解していたそうした価値について、それがなぜ重要なのかをより具体的に知る機会でもあります。アートに関わる人はそうした差異を敏感に感じることができるのだと思います。ここで得た経験や知見を、仮に今後コロナ禍が収束した後も忘れることなく、制作に活かしてほしいと思います。

  • 鈴木 康広
  • 鈴木 康広
    (アーティスト/武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科准教授/東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員)

    このアワードに審査員として参加して5年目になります。初年度はこの東京ミッドタウンの通路を展示空間として捉え直すところからはじまりました。通りすがりの人々が、ふだんそこにないものを垣間見ることで、さりげなくもその人の日常に変化をもたらしているように感じます。今年はコロナ禍ということで、多くの人がそれぞれの立場から特別な何かを感じていると思います。そこには、アートが提示するべき一側面も含まれているように感じます。こうした状況で完成度高く作品をつくり上げることは本当に大変なことで、その点でも展示が実現したことに強いインパクトがありました。公共空間で作品を目撃するということは、不意打ちで得体の知れない「何か」と遭遇することであり、都市にはそういった瞬間がますます必要とされているように感じます。今年も東京ミッドタウンにふさわしい新たな作品が姿をあらわしたことを大変嬉しく思います。

審査風景

アートコンペ総括

13回目を迎えたアートコンペでは、テーマは「応募者が自由に設定」とし、東京ミッドタウンを代表するパブリックスペースであるプラザB1Fを舞台に、場所を活かしたサイトスペシフィックな作品を募集し、計279作品の応募がありました。(応募条件は39歳以下、かつ1名(組)1作品案まで。)

前回から継続の5名の審査員のもと、「コンセプト」「場所性」「芸術性」「現実性」「独創性」を審査基準とし、審査を進めました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑み、オンラインで行った1次審査にて、書類審査により12作品を選出。2次審査では、1次審査を通過した作家に、作品模型を審査会場に送っていただき、プレゼンテーション部分は作家はリモートで参加、最終審査に進む6作品を選出しました。通過者6名には制作補助金としてそれぞれ100万円を支給し、2020年9月24日(木)より制作を実施。9月29日(火)の最終審査にて、グランプリ1作品、準グランプリ1作品、優秀賞4作品を選出しました。

作品ジャンルは、絵画作品と立体作品の応募数(各82作品)が並び、その次にインスタレーション(67作品)が続く形となりました。また地域分布については、関東圏からの応募が多い状況(応募総数279件のうち188件)が続いていますが、近年、他地域からの応募も増加しており、特に、今回は近畿地方からの応募数の増加が顕著でした(42件)。

また、緊急事態宣言発令中に募集が行われたため、応募者は、東京ミッドタウンを訪れること自体が難しい状況の中でプランを練ることを余儀なくされましたが、作家自身の身の回りにある状況に目を向けるのではでなく、自分と他者、社会との関係性を改めて問うような作品が多くみられました。また、オンライン導入にあたっての直接的な影響はまだ言及はできませんが、多くの受賞作品が非常にきれいに出来あがりましたが、ある種の「収まり感」が全体的に感じられました。今ここでしか体験できないような、大きな予想ができないエネルギーをもった作品まで昇華させることが環境により難しかったのかもしれません。全体では、評価が拮抗する審査となり、選出にあたって例年よりも長い時間を使って活発な議論を交わしました。また、受賞6作品すべてが、オリジナルのプランでは壁面を利用する前提だったため、作品サイズが全体的に大きくなったことも特徴です。

6名の受賞者には大きな拍手を送るとともに、今回ご応募いただきましたすべての皆さまに、心より感謝申しあげます。