デザインコンペ

2020年 結果発表

TOKYO MIDTOWN AWARD 2020デザインコンペ結果発表

デザインコンペ概要

テーマ

DIVERSITY

2020年――ジェンダー、人種や国籍、宗教や信条、性的指向や価値観だけでなく、働き方やライフスタイルなど、社会や個人の多様性(DIVERSITY)はますます広がりを見せています。
そんな、一人ひとりが違う時代だからこそ求められる、デザイン、アイデア、プロジェクトをあなたならではの視点で提案してください。

審査員 石上 純也、伊藤 直樹、えぐちりか、川村 元気、中村 勇吾
グランプリ(賞金100万円)─── 1点
優秀賞(賞金 各30万円)─── 3点
ファイナリスト(賞金 各5万円)─── 6点
  • ※グランプリ受賞者を世界最大規模の「ミラノサローネ国際家具見本市」開催中にイタリア・ミラノへご招待します(グループの場合は2名まで)。
応募期間 2020年6月26日(金)~7月20日(月)
応募総数 1,465点

グランプリ

uskin

  • uskin
  • 受賞者:

    CAMOTES
    若田 勇輔(左)
    アーティスト/デザイナー
    愛媛県出身
    金澤 佐和子(右)
    デザイナー
    大阪府出身
    制作協力:
    丸紅情報システムズ株式会社
    CAMOTES 若田 勇輔、金澤 佐和子

私たちは肌の色と聞くと、各々に馴染みのある色を想像しがちですが、実際のところ肌の色は多種多様で、幅広いグラデーションによって成り立っています。そんな肌の色のリングを身につけることで、“多様性を持つ”というアイデンティティを纏うことができます。

石上 純也 講評

肌の色をテーマにした作品はいろいろあった中で、すごくきれいにプロダクトとして最終的に表現したなと思ったのと、肌の色というものが美しいんだと思えるところまで完成度を高めてきました。素材はプラスチックですが、指輪は肌に合わせるときにいろんな色を考えるなかで、まさに自分の肌の色とプロダクトにある肌の色を模したものとのコントラストで何かデザインを考えるというのは、すごくいいなと思いました。プラスチックですが、何かプラスチックを超えた、有機的な柔らかさを帯びたような存在感に出来あがったというのは、素晴らしいと感じました。

伊藤 直樹 講評

実は1次審査では、あまりピンとこなかった作品でした。「DIVERSITYで肌の色ってベタだな」と思ったのと、「これならどこにでもありそうだな」と思ってしまい、正直通過しないくらいの感じでした。しかし2次審査のプレゼンで、正直感動してしまったんです。これはTOKYO MIDTOWN AWARDの特徴でもありますが、実際作家から直接プレゼンを受けることができるということで、作り手の姿勢がすごく誠実で素晴らしいな、と、そのチームに感動したということと、実際に指輪をつけてみた時に「これは着けたくなるな」って正直思ったんです。奇をてらった何かではないですし、アイデア的に際立って変わっているものではありませんが、ものすごく繊細に仕上げて人が欲しくなるところまで仕上げてきた。このコロナでみんながイラっとして世界で揉めていますが、さりげなくこういう指輪をして「肌の色に関係なくみんなでつながっている」ということを一つの指輪に表現しているっていうのはすごく良いメッセージだし、そのさりげなさが素敵だなっていうふうに思いまして、グランプリに推したい、と。

えぐちりか 講評

実用化するというTOKYO MIDTOWN AWARD の主旨をよく捉えていて、細部まで細かく検証されていました。プレゼンの中に映像もあって、この商品があることによって世の中が変わって見えるというところまでしっかりプレゼンできていたことが、勝因につながったと思います。

川村 元気 講評

コンセプトはもちろん、プロダクトとしての仕上がり方のレベルが高く、 グランプリにしかるべき美しいプロダクツに仕上がっていました。

中村 勇吾 講評

白い肌から黒い肌までの肌色をめぐるグラデーションが、 シンプルに美しい。それを自分の指にはめると、自分と同じ色が必ずどこかにあるわけですが、その自分の色を起点に他のいろんな色への思いを馳せる、といった想像の拡がりが生まれる素晴らしいプロダクトだと思いました。「肌色のグラデーション」という表現モチーフ自体には既視感があるのですが、その表現の在り処として「指にはめる」という場所を見つけたっていうのが、一番のアイデアだと思います。また、製造プロセス自体を詳細に検討したところにも、デザイナーとしての誠意を感じました。

優秀賞

濁ったクレヨン

  • 濁ったクレヨン
  • 受賞者:

    -3kg
    髙田 潤(右)
    学生
    千葉県出身
    福田 森一郎(左)
    学生
    静岡県出身
    -3kg 髙田 潤、福田 森一郎

鮮やかな色だけが果たして素敵な色なのか。濁った色で描かれる絵もまた、その人独自の感性が入った一つの素敵な作品となる。幼児や小学生に向けて、絵の表現の幅を広げる新しい20色クレヨン。今まで使われなかった色で、もっと自分らしさを育んでほしいという願いを込めました。また、「濁ったシリーズ」として、色鉛筆や折り紙などへの展開も期待でき、教育現場での表現の多様性を広げていければと考えました。

石上 純也 講評

多くの人が使うものではないけど、これがあることによって、世界が少し変わるかもしれないな、と思いました。

伊藤 直樹 講評

「ネーミングどうかな」とか、「モックももう少し仕上げて欲しかったな」とか、減点がいくつかあり、グランプリまでならなかったのですが、そこが詰めることができていたらグランプリと同じくらい魅力的なものだと思います。なので、できればこの先、詰めてもらえたらどこかのグッズショップで売られているようになるかもしれないなっていう可能性はすごく感じています。

えぐちりか 講評

DIVERSITYの捉え方に今までにない発見がありとても好感が持てました。これで描いた絵の方が、今までのクレヨンで描くより仕上がりが良いかもしれないですね。それが2次審査の資料やパッケージで、もう少し伝わるようにできていたらさらに評価が上がったと思います。

川村 元気 講評

この作品をパッと見たときに、「どう使うんだろう?」というふうに自分の頭が動き始めたというか、想像力が働き始めたところにすごく惹かれました。デザインの役割って、人間のまだ使っていない頭の部分を刺激するところにある気がするんです。このクレヨンを使って、子どもたちや大人たちがどういう絵を描くか。いろんな絵のバリエーションが、ここから生まれるんじゃないかなと思いました。

中村 勇吾 講評

カラフル・色鮮やかという典型的な「子どもの絵」のトーンを改めて捉え直したい、大人が勝手に抱いている子どもの絵のイメージを押しつけるのではなく新しい選択肢を提示しよう、という視点にとても共感しました。ただ、この明度の低い濁ったトーンが正解なのかは疑問が残りました。「濁ったクレヨン」という名前も、少しネガティブに響く印象で、もう少しニュートラルな選択肢として見えれば、さらに良かったのではないでしょうか。

茶柱あいす

  • 茶柱あいす
  • 受賞者:

    東出 和士
    デザイナー
    大阪府出身
    東出 和士

日本茶のDIVERSITYを伝える一口サイズのスイーツです。玉露、抹茶、煎茶、番茶、ほうじ茶、玄米茶と多種多様に展開された日本茶の味を楽しめます。「茶柱が立つと縁起が良い」という日本ならではの価値観をトリガーに、アイスに立った茶柱(アイス棒)を引っこ抜くようにして食べられます。手土産として使う事を想定しており、美味しいスイーツを囲って楽しむ体験が、日本を更に知るきっかけになればと思います。

伊藤 直樹 講評

1次審査で「なるほど茶柱に見立てたか。」と驚きました。アイデアにとても可能性を感じました。2次審査でモックに実際に触れてみたところ、アイスが少し茶柱に対して大きく、口に含む時の不安定さを感じました。また、陶器の器や木のケースなど、少し過剰包装ではないか、と思いました。しかし、これがもしレストランなどでデザートとして出されたら、ちょうど良いかもと思いました。何かのイベントかレストランでの実施など、ぜひ実現してほしいです! 応援してます。

えぐちりか 講評

ありそうでない商品のアイデアでとても好きでした。日本茶の種類の多さを伝えたり、日本ならではの「茶柱が立つということが縁起の良いことだ」と伝えることができていて、手土産やインバウンドのお土産にも良さそうです。残念だったのはモックも上手くできていたのですが、商品のパッケージが過剰だったり、値段の設定が、果たしてその金額で買うのかな、など、それを世の中に出すという視点が浅かった点。ここで終わらずにぜひ商品化まで頑張ってほしいです。

川村 元気 講評

茶柱という考え方がデザインになっているのはユニークだなと思いました。お茶のダイバーシティの美しさもありつつ、もらって嬉しいというか、ありがたみのある商品として実現してほしいと思いました。

中村 勇吾 講評

これも初見のアイデアとしてはとても魅力的でしたが、モノとして洗練する際の力点の置き方が微妙にずれていたような印象を受けました。茶柱が立っていること、それを持って食べること、器の中から取り出して食べること、などという、このアイスの基本的な個性を伸ばしてもらえると、もっと良くなったのではないかと思います。

はえたたかず

  • はえたたかず
  • 受賞者:

    志村敢人と津軽健介
    津軽 健介(左)
    プランナー
    東京都出身
    志村 敢人(右)
    デザイナー/プランナー
    山梨県出身
    志村敢人と津軽健介 津軽 健介、志村 敢人

都市で暮らす人々にとって、虫はしばしば嫌われ者。しかし、彼らは生態系において重要な存在でもあります。「はえたたかず」は、家の中に迷い込んだ虫たちを、お子さんがUFOで「誘拐(救出)」し、観察して親しみ、安全な屋外にかえす、虫と人とのコミュニケーションツールです。自分の知らないもの・理解できないものとふれあい、共存することを学んだその先に、さらに多様性のある世界が広がっているはずです。

伊藤 直樹 講評

この作品は、1次審査で見たときから、一番好きなアイデアでした。どういうところが好きかっていうと、作家の狙いだと思いますが、UFOという人間にとっては未知の生き物が人類と出会うわけですけれど、そのUFOにとって未知の生物であるハエやクモと出会って、やっつけちゃわずにそれを捕まえてリリースしてあげるっていう、その辺が今回のDIVERSITYっていうテーマで生物多様性を考えたときに、すごくユーモアたっぷりにプロダクトという形で伝えていて、トンチが効いておもしろいなって思いました。で、モックを見たときに、正直な感想は、CGで作られたラフの絵の方がプロポーションもいいし、魅力的に映ったんです。実際にダミーの虫を捕まえてみましたが、捕まえられないことは全然ないんですけれど、ちょっと重かったりとか、フタを開けるのが四苦八苦したところがありました。あと、ハエは難しいだろうなとかね。そういうふうにいろいろ思ったんですけれど、これが最初のプロトタイプだとすると、改良していけば、例えばこれがどこかのおみやげショップに売られているのを見かけたら、結構な確率でいろんな人が興味示すんじゃないかなと思います。特に若い子たちはかなりの確率で関心を示すんじゃないかって。そこを含めて応援票という形で僕は個人的には票をたくさん入れさせていただきました。なのでぜひモックを改良して、グッズショップに並ぶ日を期待してますので、ぜひそこまでやりきってほしいなと思ってます。

えぐちりか 講評

家に迷い込んだ蜘蛛や虫を殺すのが嫌でいつもティッシュでふわっと包んで逃がすのですが、それがなかなか難しくて潰してしまったり、ティッシュから逃がす際ちょっと怖かったりしていました。叩くのではなく、救出して安全な場所に逃がす。なんて素敵なアイデアでしょう。2次審査のモックのブラッシュアップでハエたたきには見えなくなっている点などまだ改良の余地はありそうですが、この自由な視点はとても素晴らしいです。これが世の中に出たらたくさんの人や虫たちを幸せにするデザインなので(笑)ここで満足せずにぜひ形にしてください。

川村 元気 講評

ユーモアというのは、時代においてデザインのもつ大きな武器のひとつだと思っています。この作品には、ユーモアに加えて「虫を殺さないで逃がす」という新しい提案もある。DIVERSITYというシリアスに捉えられがちなテーマに対し、ユーモアのあるデザインでアンサーしているのが素晴らしいと思いました。

中村 勇吾 講評

初見で思わずニヤッとしてしまうようなユニークなアイデアが光りました。プレゼン時には、虫を殺さないで外に逃がすための「器具」として機能させることに注力されていましたが、その洗練作業と「蠅がUFOにさらわれる」というオモシロ設定が、微妙に違うベクトルを向いていて、最初のインパクトがどこか減じてしまったような印象を受けてしまいました。

ファイナリスト

CSHATED CUP

  • CSHATED CUP
  • 入選者:

    大場 勇哉
    デザイナー
    神奈川県出身
    大場 勇哉

一枚の紙をプレスによって成形した紙コップです。プレスによってできるシワが一個一個異なる表情を生みます。使う人が一人一人異なるように、偶然できるシワは世界に一つだけの模様となります。効率的に均一な品質で生産されることが、当たり前の大量生産のシステムの中に、"不確定要素"を埋め込んであげたら、一個一個が異なる表情を持つプロダクトを作れないかと思い、作った作品です。

中村 勇吾 講評

紙をプレスしてクシャっとするときのちょっとした偶然で、様々な重なりの表情が生まれるという、「偶然性を内包した大量生産プロセス」を構想していたところが面白かったです。これがうまくいくと、大量生産品の中にも陶芸作品のような固有性や多様性が生まれ、「自分はこれが好き」といった選ぶ楽しみが生まれる可能性のあるところが、とても良いなと思いました。今回のテーマDIVERSITYへの解釈としてもユニークで、個人的にはイチオシでした。しかし、賞獲得まで至らなかったのは、プレゼンの実物サンプルに、そこまでの固有性や多様性を感じられなかったことかもしれません。また、クシャっとしたカップでも、ちゃんと水が飲めるとか、いつもと違った飲み味になって逆にそれがおいしいとか、カップの基本的な機能やクオリティがちゃんとつくれていると、なお良かったのではないでしょうか。ただアイデアの種としては可能性があって、いろんな発想が広がるなと思うプロダクトなので、どこかでこういったものが実現するのを楽しみにしています。

閉めない箱

  • 閉めない箱
  • 入選者:

    森 千夏
    デザイナー
    愛知県出身
    森 千夏

「開けっぱなしはだらしがない」けど「閉めるのは面倒くさい」。お菓子のように人目につくところに置くものにその悩みを持ちました。それならば閉める動作をなくせばいいと思い、蓋がゴムでできた箱を制作しました。ゴムの部分を手で広げると中のお菓子を取り出すことができ、離せば自然に蓋が閉じるようになっています。几帳面な人とズボラな人が一緒に使える箱の提案です。

川村 元気 講評

あやとりや折り紙の紋様などをイメージさせる、日本的な美しいデザインだなと思いました。蓋の部分の美しさもありながら、取り出し方や中に入れるものをどう見せるかというところに新しいイマジネーションが沸く作品になっていると思いました。

週n日通勤定期券

  • 週n日通勤定期券
  • 入選者:

    姜 旻珠(左)
    プランナー/デザイナー
    韓国出身
    前川 星花(右)
    デザイナー
    長野県出身
    姜旻珠、前川 星花

使える曜日を自由に選べる「週n日通勤定期券」。私たちが普段使っている「1・3・6ヶ月」単位の定期券ではなく、働くスタイルに合わせた新しいタイプの定期券です。少子高齢化が世界一進み、人材確保に困難を伴っている日本。「週n日通勤定期券」を使うことでより多くの人が自分のライフスタイルに合わせて様々な会社で働くことができるようになります。それにより働き手を増やし労働生産性の向上につながることを目指します。

伊藤 直樹 講評

コロナが終わったら全員また毎日満員電車に揺られて通勤するかというと、戻る部分は戻ったとしても、100%戻るかというと、僕は戻らないと思います。その中で、自分もクリエイティブチームをやっていて定期券を払っている側の人間なのですが、「定期券って要るのかな?」と思うところがあって、もっと定期券が柔軟で曜日とか選べるといいなと思っていたところにこのアイデアを見て、すごく素敵だなと思いました。ただこれは、個人が思いついてぱっとできる代物ではやっぱりなくて、いろいろな鉄道会社がシステムをつくって、今の非接触の改札にも当然対応しなきゃいけない。そのハードルはとても高いのですが、考え方はとても面白く、どこかの鉄道会社と組んで、一緒にやってほしいなって思うくらい、考え方としてはすごく共感できるものでした。

いつか食べるお弁当

  • いつか食べるお弁当
  • 入選者:

    ヒカルムシ
    北﨑 太介(左)
    プランナー
    千葉県出身
    大月 雄介(中央)
    デザイナー
    長野県出身
    弓場 大夢(右)
    デザイナー
    宮城県出身
    ヒカルムシ 北﨑 太介、大月 雄介、弓場 大夢

もしものときの備えとして、主食・主菜・副菜の缶詰をひとつずつ選んで作るお弁当です。お弁当は、親の愛情や食べる人の好みが詰まった、多様性あふれるご飯です。万が一の際にも、自分で選んだ自分好みのお弁当があることは、ただ非常食があること以上の安心をもたらしてくれます。また、そもそもあまり乗り気にならない非常時の備えという作業も、お弁当選びと考えると、ちょっぴり楽しい気がしてきませんか?

伊藤 直樹 講評

ただ缶詰を渡されてそれを非常食として食べるという行為は、あまり盛り上がらないだろうなと思っていたところ、お弁当に見立てることで、選ぶ楽しさとか、それを当日食べるワクワク感を設計していて、面白かった。改善点としては、お弁当が一組だけというのはどうかなと思っていて、アソートでおかずもごはんもいっぱいあって、その中から日々組み合わせて選んでいく、たぶん災害時っていうのは、一食だけではないと思うので、出せれば一週間分とか、家族でみんなで分け合って、みんなで選びながら食べる仕組みだとすると、もっと良かったかな。

My Holiday Calendar

  • My Holiday Calendar
  • 入選者:

    宮崎 琢也(右)
    グラフィックデザイナー
    福井県出身
    德岡 淳司(左)
    コピーライター/プランナー
    大阪府出身
    宮崎 琢也、德岡 淳司

「My Holiday Calendar」は一見、全ての日が真っ黒なカレンダー。ところが、数字をめくると赤色の数字が現れ、自由に休日をつくれるしかけがついています。「働き方改革は、休み方改革だ」などといわれる時代。育休、産休、リフレッシュ休暇…働く人の休日は、ますます多様化しています。数字をめくればめくるだけ、多様な休み方が尊重されていく。そんな世界の実現に一歩でも近づくことを願っています。

石上 純也 講評

これからのライフスタイルをうまく表現しています。デザイン面も、最初の段階では黒の文字一色でカレンダーが出来あがっているというのは、きれいだなと感じました。一方で、めくるっていうところのアイデアが本当に正しいのか、このデザインで休日のところは数が少ないからそこだけにフォーカスすべきなのかっていうのは、僕の中では疑問としてあり、休日を自分で彩っていくアイデアを、もしかしたらもう少し違った形でも表現できたんじゃないか、しかし、アイデアとしては素晴らしいと感じました。

言葉を味わう飴

  • 言葉を味わう飴
  • 入選者:

    ヒカルムシ
    北﨑 太介(左)
    プランナー
    千葉県出身
    大月 雄介(中央)
    デザイナー
    長野県出身
    弓場 大夢(右)
    デザイナー
    宮城県出身
    ヒカルムシ 北﨑 太介、大月 雄介、弓場 大夢

作文用紙風の包装紙に、舐めた人の感想が書かれている飴です。それぞれの紙に、全く同じ味を食した人々の、多様な感想が書かれています。感想を読み、思い出や妄想を追体験しながら舐めることで、時には暖かみのある味に感じたり、時には切ない味に感じたりするでしょう。言葉を大切にしてきた日本ならではのこの飴で、ひとりでも多くの人に、言葉を味わう楽しさを知ってほしいです。

えぐちりか 講評

同じ味でも他人から生まれた多様な感想を読んで食べることで味わいが変わるというコンセプトと、パッケージのデザインが良かったです。2次審査でのプレゼンの際、書いてある言葉を見ながら味わうという体験は面白かったのですが、書いてあったリアルに集まった言葉のチョイスが、もう少し感性を刺激するものになっていて欲しかったです。日本の豊かな言葉の表現の多様性をコンセプトにしている分、言葉のチョイスによって、本当に味が変わって感じられるところまでブラッシュアップして、ぜひ商品化を目指してください。

審査員総評

  • 石上 純也
  • 石上 純也
    (建築家)

    DIVERSITYを突き詰めると、「世の中の人みんなに受け入れてもらうもの」をつくるか、もしくは「一人でも気に入る人がいればそれでもつくってみよう」というどちらかだと思います。2020年はコロナ禍での開催となりましたが、わりとスムーズに実施できたのではないでしょうか。ただ、直接会って話せないところにはこれまでとは異なる距離を感じたような気がしました。DIVERSITYは、とても難しいテーマだったと思います。僕自身も日頃からものづくりをする中で感じていることですが、DIVERSITY の可能性を考えるには、本来は、無数の提案が必要なので、今回、一つの作品で、DIVERSITYを表現することのハードルの高さを目の当たりにしました。

  • 伊藤 直樹
  • 伊藤 直樹
    (クリエイティブディレクター)

    2020年の応募者は、リモートの中で、普段より時間があったと思います。それが良い方向に出たチームと、ちょっと考えすぎてしまって、2次審査に向けて詰め込みすぎたりとか違う方向に行ってしまったチームがあったなと思いました。そのことに対しては「あんまり大人の言うこと聞かなくていいんだよ」ってアドバイス送りたいなって思っています。僕らが1次審査で「もっとああした方がいい、こうした方がいい」と言いますが、それも話半分ぐらいで聞いてもらって、最後に立ち返るのは自分たちがDIVERSITYというテーマを与えられて発想したものなので。

  • えぐちりか
  • えぐちりか
    (アーティスト/アートディレクター)

    2020年は、世界がいきなり変わった今までにない状況だったからこそ、アイデアを出すときも今までとは全然違った頭の使い方で、良いアイデアを出すチャンスだったのではないかなと思います。2次審査はリモートでのプレゼン審査で結構影響があるかなと思っていましたが、これまでとの違いや不便は感じませんでした。1次審査よりも2次審査の方がモックもあり、プレゼンしている人たちの人柄も見られるので、審査をしていてやっぱり面白かったです。全体的にモックの完成度は高く、モックとプレゼンが上手いと1次審査の時の印象とはガラッと順位が変わると思いました。

  • 川村 元気
  • 川村 元気
    (映画プロデューサー/小説家)

    今の時代においてデザインにはどういう役割があり、これからどんな可能性があるかということを、審査全体を通してすごく考えました。ライフスタイルや価値観が大きく変わる状況の中で、人間はどうやって楽しく生きていくのか、何を幸せだと感じるのか。それらの課題に対して、新しい視座を与えることができるのがデザインの大きな力だし役割なのではないかなと改めて感じました。

  • 中村 勇吾
  • 中村 勇吾
    (インターフェースデザイナー)

    A3の紙一枚の企画資料から選ばれた作品が、実物のスタディを経て、作家がプレゼンをするプロセスで審査しますが、頭で考えてる企画レベルから、モノとして実体化していく中で、新しい気づきや発見がいろいろ起こりうると思います。その中で創造的なジャンプがあるとすごく良かったと思うのですが、今回は、企画に少しだけ何かをプラスして洗練したり、現実性を高めてきたり、不備を直してきたりと、そういったジャンプがあまり感じられませんでした。原案の中心的なコンセプトさえずれていなければ、もっと大胆に試行錯誤してもいいんじゃないかと思いました。

審査風景

デザインコンペ総括

13回目となるデザインコンペでは、「DIVERSITY」をテーマに掲げ、これまでと変わらず応募時点で39歳以下という条件のもと、継続で5名の審査員に審査を行っていただきました。

全体的に、新型コロナウイルスの影響を大きく受ける年となりました。
生活様式が変化し、創作にあてる時間が増えたことが影響してか、1,465作品という過去最多の応募がありました。歴史から紐解いてみても、疫病が蔓延した後に、大きな芸術運動が起き、若き才能が花開くことが多く、今回の応募数には、主催者一同、勇気づけられる結果になりました。

応募作品の傾向としては、多岐に渡る提案があったことが印象的でした。プロダクト・グラフィックといった従来の提案にとどまらず、サービス、サイン、システム、公共空間やインフラなど、「デザイン」の世の中への浸透度や期待する役割を垣間見た気がしています。と同時に、テーマともなっていた「DIVERSITY」の解釈には、多様性が乏しい印象を持ちました。

「デザイン力」「提案力」「テーマの理解力」「受け手の意識」「実現化(含む商品化)につながる」の5つを審査基準としており、1次審査では書類審査で10点を選出、2次審査ではプレゼンテーション・審査員との質疑応答を行い、グランプリ1点、優秀賞3点、ファイナリスト6点を決定いたしました。

1次審査の一部と最終審査のプレゼンテーションをリモートで行い、画面越しでのコミュニケーションも余儀なくされました。プレゼンターにとっては、リアルではないという制約を見事クリアし、より伝わりやすいプレゼンテーションへとアップデートしていたと感じています。

グランプリと優秀賞については長い議論が行われ、商品化・実現化について期待の高い作品を発表できることを喜ばしく思います。これまでと同様、今回の受賞・入選作については商品化・実現化の可能性を探っていきます。また、受賞者・入選者とのコラボレーションなどの支援をさらに推進し、デザインに関わる皆さまの目標であり続けられるよう努力してまいります。

厳しい状況下でチャレンジをしてくれた、全ての応募者に感謝申しあげます。