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これまでの受賞者の声一覧アートコンペ受賞者

“自らの技術を集結させて、つかんだグランプリ

“Tokyo Midtown Award 2014 アートコンペでグランプリを受賞した、金属造形作家の原田武さん。コンクリートブロックの壁とそこに生きる虫や息づく花、これらすべてを金属で再現した受賞作品「群雄割拠」は、どのように意図され、制作されたのか。構想から受賞にいたるまでの道のりを伺った。

インタビュー 高橋 淳・テキスト 大庭典子

―― 2014年のアートコンペのテーマは、「応募者が自由に設定」とのことですが、自由にも、また不自由にも取れるテーマ設定について、原田さんは、どんなことを感じましたか。

原田:僕の場合は、テーマが先に決まっていたほうが出しづらかったと思います。好きなものがつくれなくなる、というか、自分のなかに常にテーマはあるので。

―― テーマ設定が自由、という状況で、どのようにして原田さんの作品『群雄割拠』は、できあがったのでしょう。

原田:これまでずっと、金属を使って写実的に表現するということをやってきたので、その部分は今まで通りというか、最初から決めていました。そのうえで、頭のなかにいくつかあった作品のイメージから、「東京ミッドタウン」に展示して合うもの、かっこいいものはどれだろうと考えて、展示空間を思い描きながら、「塀の高さはこれくらい」「トンボをとめて」など作品構成に落とし込んでいきました。

Tokyo Midtown Award 2014 アートコンペでグランプリを受賞した原田さんの作品「群雄割拠」

Tokyo Midtown Award 2014 アートコンペでグランプリを受賞した原田さんの作品「群雄割拠」

―― ブロック塀もとんぼもすべて金属でつくっているのは、驚きでした。塀の質感もすごくリアルで。

原田:今回の受賞は、技術の部分を評価してもらえたと思っています。ブロック塀のように、対象を限定することで、多くの技術、そのなかには自分が発見した技法もあるのですが、そういうことを詰め込んでいます。

―― 技術の高さや精巧さは実際の作品を見るとよくわかるのですが、応募書類上で伝えるのは難しそうですが。

原田:その通りですね。素材については全部書き出していました。1次の書類審査を通ったときは、よく伝わったなと安心しました。

―― 次の2次審査は作品模型を使ったプレゼンテーションでした。原田さんは人前で話したり、そういったことは…

原田:すごく苦手なので、憂鬱でした(笑)。

二次審査での公開プレゼンテーションの様子

二次審査での公開プレゼンテーションの様子

―― 審査中の質疑応答を経て、作品の全体像が調整されていくようなこともあったのですか?

原田:実は最初に出した案には、塀の下の土台はなかったんです。審査員との質疑応答では、コンセプトの話よりも技術的なことに質問が集中して、なかでも「作品の自立」に関して、多くの疑問が出ました。「作品が完全に自立するためには、土台が必要なのでは」と審査員の方から意見があり、急遽つくることになったのです。

―― 塀の下の土台は2次審査後にできたんですね。

原田:はい。ただ、簡単に「つくります」と言ったはいいのですが、最初の案自体が、搬入日から逆算して2か月ギリギリで仕上がるようにデザインしていたので、ベースをつくるとなると間に合うかどうか、かなり心配で。土台もただつくるのではなく、その世界観が作品全体のイメージに合い、また展示する空間にもはまるように演出しなくてはならないし、時間調節も含めて大変な作業でした。

制作段階の様子

制作段階の様子

―― 『群雄割拠』は、2ケ月で完成させていたのですか。相当タイトですね。その期間、ほかのプロジェクトも進行していましたか?

原田:ほかがあったら間に合わなくなることはわかっていたので、この期間は最初からこのために空けておきました。もしも2次審査で落ちていたら…きっと暇でしたね(笑)。そういう意味でも審査通過の連絡はホッとしました。

―― 実際に会場に設置するには、どれくらいの日にちをかけたのですか。

原田:1日で行いました。広島から東京まで車でパーツを運んで、夜中に、東京ミッドタウンの展示会場で組み立てて。

―― グランプリの連絡をもらったときのことは覚えていますか?

原田:確か、授賞式の前日に連絡がありました。このコンペのために、スケジュールを空けて、集中して、とできる限り頑張ったつもりですが、それでも「まさか本当に」と驚きましたし、嬉しかったです。

―― ちなみに…グランプリの賞金100万円の使い道は?

原田:作品づくりに必要な道具が主な使い道ですね。ひとつ10万を超えるものもあるので、欲しいと思っていた道具を買いました。

賞金で購入した超音波研磨機

賞金で購入した超音波研磨機

―― グランプリの副賞として「ハワイ大学のアートプログラムに招聘」もありました。この経験は、原田さんに何か影響を与えましたか?

原田:このコンペに応募したころは、大学に籍を置いていて、先生の補助という形で生徒に教えていたりもしたのですが、その感じとはまた違っておもしろかったです。技術を教えていても、自然に質疑応答のような形になって、こちらの一方通行じゃない感じも新鮮で。生徒たちもすごく楽しそうに制作していました。

ハワイ大学のアートプログラムの様子

ハワイ大学のアートプログラムの様子

―― プログラムにはどんな人たちが参加しているのでしょうか。

原田:本当にさまざまな年齢や職種の方がいました。普段は大学で教えていて、休職して参加している方とか、高齢の方もいて、誰が先生だかわからないような感じもあって。ハワイには、鍛金で作った鶏をモチーフにした「愛憐」という作品を持っていったのですが、日本文化を感じるものに対しては、すごく反応がよくて、教えていても日本人に近い感覚をもっていると感じることも多かったです。その感覚と、アメリカ的なファインアートの匂いも混ざっていて、独特な感性をもっていると感じました。

鶏をモチーフにした「愛憐」

鶏をモチーフにした「愛憐」

―― グランプリを受賞して、原田さんには何か変化は起きましたか。

原田:表立ってものすごく変わったことはないかもしれませんが、作品をつくるときの迷いがなくなり、自信がつきました。日々の作品づくりのなかで、ここまで大々的に評価されたり、作品の価値が決まる機会は少ないので、制作に向かう勢いは増したと思います。受賞後は少しずつ仕事のオファーも増えてきました。

―― 今はどのような活動をしているのでしょうか。

原田:作品づくりと展示をメインに行っています。展示を観た方から「こういうのはつくれる?」とオーダーをいただくことも。

―― ちなみに、『群雄割拠』は、今どこかに保管しているのですか。

原田:いえ、広島市立大学に置かせてもらっているのですが、置き場所はけっこう悩みの種なんです。これからどうしようかと思っています。塀のなかは空洞ですが、あれだけ金属が集合していると、すごい重さになってしまうんですよ。普通の家では床が抜けてしまうので(笑)。

―― それは運ぶだけでも大変ですね。では、最後にこれから応募しようと思っている方に、原田さんからメッセージをお願いします。

原田:Tokyo Midtown Awardのアートコンペは、2次審査まで通過すると、制作費100万円も出るというのが、大きな魅力ですし、ほかと違う点だと思います。今まで構想はあっても、予算的につくれなかったものにもトライできますし、アイディアや作品の幅も広がります。より自由でチャレンジングな発想で作品づくりができるコンペですので、ぜひチャレンジしてください。

原田 武
原田 武 Takeshi Harada
金属造形作家
1984年 愛知県生まれ
2007年 広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科金蔵造形専攻 卒業
2009年 広島市立大学大学院芸術学部造形計画専攻金属造形分野 修了
2014年 Tokyo Mid Town Award 2014 グランプリ(東京ミッドタウン /東京)
2016年 第19回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展 入選
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