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“縁起のいい貯金豚”が教えてくれたこと。

デザイナー 藤本聖二/「縁起のいい貯金豚」でTokyo Midtown Award 2011 デザインコンペのグランプリを受賞した藤本聖二さん。現在穴吹デザイン専門学校の講師として勤務しながら、デザイナーとして活動している。応募から受賞、そして商品化に至るまで、当時を振り返りながら話を伺った。

インタビュー・テキスト 高橋 淳

―― 2011年のデザインコンペは『5』というテーマでしたが、どんなことから考えて、貯金豚を思いついたんですか?

藤本:身の回りにある『5個のもの』や『5の数字がつくもの』など『5』にまつわるものを片っ端から考えました。ただ、そういった『5』から貯金豚にたどり着いたのではなく、前に貯金箱の新しいデザインを考えていたことがあって、ほぼアイデアの原型があったんです。箱に入れなくてもお金を貯めることのできるデザインとして、硬貨の穴を活用する、という。でも5円と50円というだけではテーマに対してちょっと弱いな、と。それでこの貯金豚の価値はなんだろうと考えたときにお金ではなく、『ご縁』を貯めるものっていう貯金豚の具体的なコンセプトが生まれました。

縁起のいい貯金豚

縁起のいい貯金豚

―― ご自身の中に元ネタがあったんですね。貯金豚以外に考えていたアイデアはありました?

藤本:5月5日から鯉のぼりの靴下とか?でも商品で既にあって…他にも四角の角を1つ削って五角形になるとかアイデアのタネになるようなことはいろいろ考えましたが、貯金豚ほど具体的なところまで詰めたアイデアはなかったですね。

―― 2011年は応募期間が1ヶ月だったのですが、どれくらいの時期に応募しました?

藤本:ギリギリまで粘り、確か締め切りの前日に出しましたね。もしかしたら他にもっといいアイデアが思いつくかも……、と。もともと往生際が悪い性格なのかも知れません。

―― ずっと気になっていたんですが、なぜ豚なんですか?

藤本:よく聞かれるんですが、僕の中で貯金箱といえば豚というイメージがあって。個人的に好きで何個か持ってるんです。

藤本さんのブタの貯金箱コレクション

藤本さんのブタの貯金箱コレクション

―― グランプリ受賞の連絡を受けた時のことを詳しく聞きたいです。

藤本:ある日、携帯電話に知らない番号の着信があったんです。デザインコンペの結果の連絡だとは全く思わずに電話に出ると「おめでとうございます。入賞です」と。これを聞いた時は月並みな表現ですけど、飛び上がるほど嬉しかったですね。

2011年授賞式の様子

2011年授賞式の様子

―― ズバリ、賞金の100万円の使い道は?

藤本:これも周りからよく聞かれるんです。「何買ったんだ?」とか「あとどれくらい残ってる?」とか。パーっとみんなで飲みにでも行けば、面白い話しになるかも知れませんが……、特に賞金で大きな買い物はしていないんです。カメラを買いましたが、それは特別高いモノではないですね。1番の使い道は、商品化に向けてメーカーとの打ち合わせのための交通費じゃないですかね。僕は広島でメーカーが富山だったので。

―― やっぱり賞金の使い道はみんな気になるんですね。今『商品化』というキーワードが出ましたが、どうやってメーカーを探したんですか?

藤本:自分のイメージ通りに作ってくれるところを探していくうちに、鋳物を伝統産業にしている富山県に良いメーカーがたくさんあることを知ったんです。いくつか候補がある中で、地域の産業を守りながら、世界的にクオリティの高い作品を多くつくられている能作さんにお願いすることに決めました。風鈴や動物の苔盆栽など個人的に好きなプロダクトも手掛けられていたので、まずはダメ元でもいいから、自分が一番やってほしいところにお願いしようと。

―― 商品化する上で、デザイナーとしてこだわったところを教えてください。

藤本:5円玉を貯金できる「きんとん」は真鍮(しんちゅう)、50円玉の「ぎんとん」は白銅(はくどう)と、それぞれ通す硬貨と同素材で作っていることです。それに加え、実際に硬貨を通したとき、豚の頭とおしりだけピカピカにならないように仕上がりの風合いと質感までこだわっています。貯金するお金ってたいがい使い込まれていますからね。

鋳造の様子

鋳造の様子

―― そういったこだわりを伝え、メーカーと調整を重ねていく中で、いろんな発見がありそうです。

藤本:そうですね。真鍮と白銅が持つそれぞれの特性や生産コスト、金額設定に至るまで色々と知ることができました。それと、僕の作る原型の精度次第で仕上がりが左右するので、かなりプレッシャーを感じたのを憶えています。
 ちなみに増税前に発売した当初、税込みで「きんとん」が5005円、「ぎんとん」が7007円でしたが、「縁起のいい数字」ということと真ん中に0が挟まれているビジュアルが、円い硬貨を頭とお尻で挟む貯金豚の形にリンクするということでそう決まりました。
 他には「きんとん」が5円、「ぎんとん」だと50円のおつりが出る金額設定にするアイデアも出しました。ただ、ネットで買う人には伝わらないってことでボツになっちゃいましたが。

商品化過程の一コマ

商品化過程の一コマ

―― 貯金豚ならではの金額設定ですね。販路はどのように決めたんですか?

藤本:メーカーの能作さんが販路をお持ちだったので、基本的におまかせしています。あとは地元の広島でお世話になっているインテリアショップでも取り扱いたいと言っていただいたので、そこでも販売しています。

―― グランプリ受賞、そして商品化を通して藤本さんに及ぼした変化や影響を教えてください。

藤本:この作品がいろんな人に僕のことを知っていただくきっかけになったことですね。いろんなジャンルのクリエイターや職人など、様々な人との出会いが増し、仕事の幅も広がりました。

―― 良い循環が生まれたんですね。今後の Tokyo Midtown Award で入賞を夢見る方々に応援メッセージをお願いします。

藤本:僕もまだまだ挑戦する立場なので、偉そうなことは言えませんが……「とにかく出す」、ということですかね。昔、あることで恩師に『1回やると決めたものは、やれ』と叱られてから特に意識するようになったのですが、自分次第で諦めることも、考えることを先延ばしにすることもできるコンペだからこそ「応募する」と決めたらやる。納得いかないものだとしても、結局それがその時の自分の実力なので、それを知るだけでも意味があると思ってます。それに自分で諦めなくても、コンペは結果で評価が出ますからね。それを待たずして途中でやめるのはもったいないです。あと、僕はいつも思いついたアイデアを忘れずにメモできるよう、1冊だけでなく自宅や職場のいろんなところにノートを置いてます。たまにどこに描いたか忘れてしまうこともありますが、忘れた頃にアイデアを見返すことができるのもいいですよ。『縁起のいい貯金豚』がグランプリをいただけたのも、そのノートの中の1冊に描き留めておいたおかげです。

構想時のスケッチ

構想時のスケッチ

―― 今年も応募するんですか?

藤本:いえ、今年は生徒たちの応募をバックアップします。でも、いいアイデアが思いついたら応募するかも知れません。

―― ありがとうございました。最後にこれからチャレンジしたいことを教えてください。

藤本:これからもデザイナーとして様々な仕事にチャレンジしつつ、貯金豚の商品化で得た経験を活かし、いろんなものを作っていきたいですね。

藤本 聖二
藤本 聖二 Seiji Fujimoto
1977年 広島県三原市生まれ
1999年 山口大学工学部機械工学科卒業
2003年 穴吹デザイン専門学校インテリアデザイン学科卒業
2011年 東京ミッドタウンアワード2011 デザイン部門 グランプリ
現  在 穴吹デザイン専門学校教員として勤務及びデザイナーとして活動中
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